異世界変態紀行? -いきなり飛ばされ奴隷として買われ・・・-

@ta92eda

第1話 ぷろろーぐ

暗い部屋の中。

わたしはただ目の前に映し出される映像に心を奪われていた。


映し出されているのは男の子。・・・いや、娘?

とにかく綺麗な娘?だった。

それに彼女?を取り巻く膨大な魔力。


元々はそう、母がいい加減、パートナーを見つけろとせっついてきたことが切っ掛け。

子供の頃からちょっとだけ他の人より賢かった。

そのおかげで魔法に関する知識も他のとは比べ物にならない位、身についた。

結果、自分の魔力では足りなくなった。

仕方なく他人から分けて貰うも、相性が悪かったり、相手の魔力を吸い尽くしてしまったり・・・

そんな時だった。

彼女?彼?を見かけたのは。

漠然とネットサーフィン《魔力サーチ》をしてて・・・偶然だった。

内包する膨大な魔力。

わたしはその魔力が欲しかった。

いや、正確には彼女?が欲しかった。

人を好きになるって事がわからなかったわたしにとって衝撃だった。

一目惚れって本当にあるんだね。

すっかり目が離せなくなり彼女を観察して既に2ヶ月。


元々、引き篭もりなので苦にはならなかった。

むしろ、彼女?を見られるのが嬉しかった。

観察を続けてわかった事。

彼女?には家族が居なかった。

・・・違うな。居なくなった。

彼女?を見つけたのは彼女?の家族の葬儀中だった。

事故に見せかけた殺害。

犯人は彼女?の身内。

その身内に何もかも奪われ、途方に暮れていた。


何もかも奪われ彼女?は生きる為に身体を売り始めた。

もう見ていられなかった。何とかしてあげたかった・・・


◇◇◇◇◇◇◇◇


「・・・・」

僅かなお金の為に今日、見ず知らずのおっさんに抱かれた。

まさかこんな初体験するとは思わなかった。

童貞失う前に処女失うとは・・・

ってか、女じゃないから処女?とは言わないのか?んじゃ何ていうんだろう?

って、そんな事どうでも良いか。


ワタシ、何やってるんだろうね。

そうまでして生きていく意味、あるのかしら?

いっそ死んだ方が楽なんだと思う。

でもね、夢の中で声が聞こえるんだ。

夢?なのかなぁ?起きてる筈な時でも

目を瞑るとたまに聴こえる。

駄目だって。迎えに行くから待っててって・・・

幻聴?ついに頭おかしくなった?

それでもその声に励まされ、今日も生きてる・・・


◇◇◇◇◇◇◇


準備は出来た。

もう直ぐ・・・もう直ぐ会える・・・



◇◇◇◇◇◇◇


「どうだい?中々の景色だろう?」

夜の公園、東京湾に面した人工の砂浜が近くにある。まぁ、この辺りは

埋立地しかないから人工なのは当然だけど。

人工物ってのはだいたいが見る人にきれいに見える様に作られる。

ここも例外なく、近くを走る高速道路の明かりや夜間も稼働している工場の照明などが少しばかり幻想的な景色を演出している。

こういった場所は所謂、定番のデートスポットだ。

ここでいい雰囲気に持ち込んでそのままホテルに連れ込んで・・・なんてのがお決まりのコース。

「・・・うん、きれい・・・」

下心が見え見えでうんざりはするが否定もせず相槌を打つ。かなりいい加減に相槌を打ったつもりだったがいけると勘違いしたのか、背後から抱きしめてきて耳元でささやいてくる。

「今夜は帰さないよ?・・・いいよな?今日はそう言う約束だ。」

ダサイにもほどがあるセリフだが本人は恰好をつけているつもりらしい。

限界近くまで後退した頭髪、鍛え抜かれたビール腹、今時あり得ないセンスの服装。

普通なら確実にドン引きで・・・もちろんワタシも引いてる。

「・・・そろそろ、行こうか。」

鼻息も荒くなってきた男にそのまま肩を抱かれ、近くに違法駐車されている成金丸出しのスポーツカーへと戻る。

カラダ目当ての男にお金目当ての女。まぁ、よくある光景。

問題は、ワタシが女ではないという事・・・問題でもないか。

人工物は見る人にきれいに見える様に作られる。

それは建物とか景色だけじゃなく、人も同じ。好きになってほしいとか、お金がほしいとか理由はさまざま。

・・・ん?ワタシ?当然、お金。童顔で見た目だけならそこそこ?

おかげでそう言うのが好きな変態(おっさん)からはかなり好評。

それにしても・・・人間の欲望ってすごいよね。特に性欲。

一般的に「お金を払って女性を買う」と普通に売春。当然、法律に触れる。

ならば、男性だったら?女性が買うと普通に売春。男性が買うと・・・?

あやふやだが男同士の場合、かなりのグレーゾーンらしい。

元々が同性婚が認められてない国ということもあってその辺の法律ははっきりしない。

こういった微妙なラインを突いて商売にするやつが必ずいる。

駅売りスポーツ新聞の求人欄。

「ホスト募集、日給3万以上」と言う内容、店舗名、電話番号。

元々はその手の趣味の人相手に細々とやっていたみたいだけど・・・流石に時代が時代。

穴があればどっちでもいいってやつとかが増えたおかげで

一般的に見れば華奢でちっとも男らしくないワタシでも

需要が出てくるわけで。。。一部マニアには「男の娘」なんてもてはやされたりも・・・


最初は単純に「お金がほしかった」だけ。生きていく為に。

いざ始めてみると女の子扱いされてちやほやされて・・・気分的には悪くなかった。

指名貰って一晩相手をする。それだけで3万円。食事に付き合うだけの時もあれば

実際に性行為(?)もあるときも・・・

買う側はさらに店に2万とか払ってるので実質、一晩で5万以上。

新宿とかのラブホの前でたむろしている外国人のお姉さん達よりも高い。

背徳的だから余計に魅力あるのかもしれない。

最初の客はその手の趣味の年配の気弱そうな男性だった。

特に何をするでもなく一緒に食事して寝ただけ。それだけで翌日、3万もらって別れた。

すっかり味を占めたワタシはその後もこのバイトをつづけた。

2回目からは性行為も伴うものばかりだったけど不思議とあまり気にもならなかった。

自分にそんな趣味があるとは未だに思っていない。

恋愛対象は女性だと今でも思っている。

・・・思ってはいるけど基本的に人を好きになったことが無い。

欲望丸出しなやつばかり見てきたからだろうか・・・

実際、こいつもヤル気満々だ。


男同士とは言ってもする側は普通に女性相手としてることと変わらない。される側は・・・

最初、抵抗はあったけれど慣れるというか・・・コツをつかむと気持ち良かったりする。

あとは相手をなるべく見ないようにして自分は女性だと思い込ませる。

まぁ、淫乱で金の亡者で・・・どうしようもない人間だという自覚はあるよ?


高速をあり得ないスピードで飛ばし、インター近くのホテルに着くといきなり抱きついてきたので

とりあえずシャワーを浴びるといって浴室に逃げ込む。「一緒に入る」とかほざいてたけど丁重にお断りした。男同士でお風呂でイチャコラとか・・・キモイキモイ。

服を脱いでシャワーを浴びる。汗もかいてたしさっきの潮風でなんかべたべたするし。

ユニットバスにお湯をためながらカラダを洗う。鏡越しに映る自分・・・

「・・・はぁ。」

溜息がでる。自分を見て思う。

・・・ほんと華奢だよなぁ・・・

「・・・はぁぁ。」

また溜息。

部屋の外の・・・今日のお客の事を想像する。

今頃、ヤル気満々で○まむしやら精力剤とか飲んで準備してるんだろうな・・・

「はぁぁぁ・・・気持ち悪・・・」

せめて見た目がもうちょいマシなら・・・なんて思いながら・・・

目をつむり、頭を洗いながら深いため息をついた。


その時、彼は気づかなかった。

逃げる様に入った浴室。その床に描かれた魔方陣。

しかも、無意識にその魔方陣を踏み、書き換えてしまっていた事に・・・


◇◇◇◇◇◇◇


ふひひ。

ようやく見つけた。

内包する魔力量、俺があの世界に復讐する為の魔力。

魔力だけじゃない。

これだけの容姿、苛めがいがある。

色々苛め抜いて更に魔力を高められる。

とりあえず風呂場に転移の魔方陣を仕掛けておいた。

転移先は俺の住んでいた城。

その後、俺が転移する為の魔力を吸い取る仕掛けも用意した。

もう直ぐだ。

俺をこんな所に追放した奴らに目に物を見せてくれる・・・・


・・・ん?

な!?魔法陣が勝手に起動してるだと?

くっ!

しかも俺に制御出来ないだと!?

どうなってるんだ!?

くそっ!!


◇◇◇◇◇◇◇◇



待たせたね。

もう直ぐ会えるよ。

・・・・じゃあ、いくよ?

映像の中の彼女?彼?をじっと見据える。

やけに肌色が多い気がした。

バスルームだった。

当然、全裸だった。


・・・ぶはっ!!

「・・・あっ。」

あまりの衝撃に鼻血を吹いた。

・・・だけじゃない・・・


転移の座標・・・ズレちゃった。


◇◇◇◇◇◇◇


色々な思惑と偶然が重なった事を彼?あるいは彼女?は当然、知る由もない。

ただ、バスルームで頭からシャワーを浴びたその瞬間、なんか眩しかったのと・・・暖かかったシャワーがいきなり水に変わった。

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