グリムノーツ ガラスの森編
尼怪(にけ)
第1話 ガラスの森の物語
昔むかし、貧しい村に貧しいけれど勤勉で賢い少年がいました。
少年の名前はカイン。
カインは両親を早くに亡くして一人ぼっちでした。しかし幸運にも、カインは「時を総べる妖精の輪「フェアリーサークル」に遭遇した。
「フェアリーサークル」に入った人間は違う時代へとテレポートしてしまうと、村では言い伝えられていました。
数日間、姿をくらましたカインは大きく成長して村に帰ってきました。カインは科学が発達した未来の世界を見て帰って来たのです。
カインはその後、船を作る発明家になり、小さな貧しい村は大都市へと急速に発達しました。
――ガラスの森の物語
『妖精の群れに遭ったら気をつけなさい。輪の中に入ってしまったら、もう元の世界には戻れない』
エクス 「昔ね、僕の生まれ育った街でも聞いたことがあるよ」
レイナ 「どんな話? 」
エクス 「誰かがいなくなると「時の妖精」のせいに違いないって。 ……だから暗くなる前に帰ろうって言われたよ。懐かしいなあ」
レイナは少し考えるように視線を彷徨わせた。
「神隠しは妖精のせいだと言われていたのね。でもカインは幸運にも妖精の輪の中から未来の発展した世界へと旅立った。妖精の輪も悪くはないわね」
エクス 「未来がわかったら、僕もお金持ちになれるかな」
シェイン「頭も良くないと労力の無駄ですね。……ぷぷっ」
タオ 「俺だったら賭博で大勝ち巨万の富を築きあげる! ……タイムトラベルか…男のロマンだな」
エクス 「夢があるよね」
四人はカインの生まれた村へ向かっている。
エクス 「……? 」
村は薄闇に包まれたように暗く、活気がない上に人の気配も感じられない。四人はお互いの顔を見合った。
タオ 「廃墟? 」
エクス 「静かすぎるね」
四人は顔を見合わせた。
エクス 「誰かいませんか~? 」
エクスの声が虚空に消えていく。
レイナ 「おかしいわね。コルトヴォル村は寂しいけれど、のどかで平和な村のはずよ? 」
シェイン「廃墟にしか見えませんね…」
エクス 「お~い、誰か~……」
エクスが煉瓦の家の戸口に向かって声をかけると、神妙な顔をした老婆がそろりそろりと出てくる。
「お前たち……余所者だね? ……悪いことは言わないから、すぐにこの村を出ていくんだよ」
エクス 「何かあったんですか? 」
老婆 「この村は呪われているんだよ」
レイナ 「どういうこと?」
老婆 「まず一人の子供が消えたのさ。一年前だったかね。それからというもの、一人また一人と次々と村の子供たちは姿を消して、ついには村の全ての子供たちが消えてしまったのさ」
エクス 「なんてことだ……」
老婆 「今、この村の人間の心は荒み、お互いを疑心暗鬼に監視しているのさ」
レイナ 「カオステラーの仕業に間違いないわ」
シェイン「このままだと、この村は破滅しますね」
老婆 「ひぃぃぃ!? 」
老婆は干からびた猿のような顔をさらに苦悶にゆがめて悲鳴をあげた。
エクス 「大丈夫ですか? 」
老婆はエクスの腕にしがみついて憔悴している。
老婆 「その通り!! 未来を担う子供たちがいなければ、この村はもうお終いだ」
エクスは老婆の肩を慰めるように抱きながら仲間たちの顔を見つめた。
レイナ 「カインが戻らなければ、航海技術も進まない。この世界の科学の発達が遅れてしまう」
タオ 「バッドエンドだな。何も始まらない、何も終わらない」
レイナ 「カオステラーはどこに潜んでいるのかしら? 」
老婆 「あんたたち、カインを知っているのかい? カインは何処に消えたんだい? 」
タオ 「それを俺たちも探しているんだが……」
村人 「お前たち、婆さんを羽交い絞めにして何をしている!?」
突然、村人たちが現れた。あからさまに不審な目で四人を見ている。
エクス 「えっ!? 誤解です」
エクスは慌てて老婆から離れたが、後のまつりであった。
老婆 「こいつら魔女だよ! 危うく私も誘拐されるところだった」
エクス 「えっ? えっ? お婆さん!? 」
エクスが目を白黒させて困惑しているのを全く気にした様子なく、老婆はヒステリックに喚きたてた。
村人1 「お前たち何者だ?」
エクス 「僕たちは旅人です」
村人2 「限りなく怪しいな」
エクス 「違います…」
村人3 「お前たちが子供たちを隠したんだ! 」
エクス 「そんなっ…」
村人1 「こちらへ来い! 魔女裁判にかけて罪を断罪してやる」
エクス 「わわわ…!」
シェイン「完全に狂ってますね」
タオ 「イっちゃってるな」
村人2 「うるさい! お前たちもだ。疫病神め! 」
村人1 「つべこべ言わずに早く来い」
四人は村の集会場へ連れて行かれた。
老婆 「ああああ! 神のご加護を」
老婆の憐れむような悲痛な声が響いた。
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