王様の誤算
「嘘だろ……。そんな……」
読んでいた手紙がはらりと机の上に落ちる。カットは糸の切れた人形のように、力なく椅子に座りこんだ。
「なんで……こんなことになるんだよ……」
そっと机にある手紙を引き寄せ、文面を何度も確認する。だが、カットの望みは叶うことなく、そこに書かれている文章は残酷な現実を告げていた。
「まさか……母さんがそんな……」
動揺に声が震えてしまう。それでもかまうことなく、カットはもう一度手紙の内容を確認した。
「嘘ですよね……。叔父上……」
また、手紙を落としてしまう。むなしく机に落ちる手紙を見つめながら、カットは両手で顔を覆っていた。
「陛下っ! ちょっと聞いてくださいよっ!」
部屋の扉が乱暴に開けられる音がする。同時に騒がしいレヴの声が聞こえて、カットは猫耳をぴくりと動かしていた。
「あの老害っ、フィナちゃんを陛下の婚約者として舞踏会でお披露目するとか言い出しやがったっ! しかも、お祝いの品と一緒にフィナちゃんを王妃の間に押し込めて……」
かつかつと彼の足音がこちらに近づいてくる。
「陛下……どうしたんですかっ?」
自分の様子に気がついたのだろう。レヴが慌てた様子で声をかけ、こちらに向かってくる。カットは顔から手を離し、立ちあがっていた。
「レヴっ……」
自分に近づいてきたレヴにカットは抱きついていた。顔をあげると、レヴは心配そうに自分の顔を見おろしている。彼はカットを抱き寄せ、耳元で囁いてみせる。
「大丈夫ですよ陛下、落ち着いて……。俺が側にいます……」
「レヴ……」
「何があったか、教えてくださいませんか?」
レヴの言葉にカットは俯いていた。唇を引き結び、カットはレヴに言葉を告げる。
「最悪だよ……。フィナを救いたい一心で叔父上たちに手紙を出したのに、思わぬ返事が帰ってきた……」
狡猾な叔父たちに助力を乞うた自分の愚かさを、カットは呪っていた。レヴの胸元に顔を埋め、カットは言葉を続ける。
「このままじゃ、ファールファグルは戦争に巻き込まれる……。フィナと俺の力が戦争に利用されるかもしれない……」
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