七夕の想区 ー願いの交錯ー

神木立泉(かみきりついずみ)

第1話

レイナ「いたたたた~・・・」


エクス「レイナ、大丈夫??」


シェイン「姉御、大丈夫ですか?」


足元を見ると、そこには水辺のぬかるみのようだった。


タオ「お嬢、だから夜の間に移動するのはやめた方がいいぜって言ったじゃねーか」


レイナ「仕方ないじゃない、大雨の中で野宿するよりいいでしょ!」


シェイン「それでも、結局姉御はびしょぬれですが」


エクスは立ち上がろうとするレイナに何気なく手を差し伸べた。


無意識に手を伸ばしたレイナだったが、ふと何かを思い、手を取らず、膝に手を当て立ち上がった。


レイナ「大丈夫よエクス、有難う。」


エクス「あ、うん。」


タオ「それにしても、きれいな星空だなー!」


レイナ「本当ね、でもこの想区にもカオステラーの気配を感じるわ。気を抜かないでね。」


シェイン「お嬢は気を抜いていなくても危うい目に遭いますからね。」


エクス「まあ、この間は特別だよ」


レイナ「うー!みんなしてっ!」


タオ「おいおいお嬢、俺は何も言ってねーぜ(笑)」


シェイン「それはそうと、今夜は結局野宿ですかね?」


レイナ「家の明かりが見えるわ、今夜はあそこで宿を探しましょ」


ヴィラン「クッルルゥ~!!」


タオ「到着早々、お出迎えはやっぱりこいつらかよ」


レイナ「みんな、行くわよ!」




エクス「ジャック、巨人を倒す勇気を!」


レイナ「シェリー、魔力を解放して!」


タオ「サンチョ、叩き潰してやろうぜっ!」


シェイン「オデッサ、大きな剣を振りかざしましょう」



・・・



タオ「ふぅ~、一汗かいたら街へ着いたな」


シェイン「いい汗ではないですがね」


レイナ「見て、あそこの牛舎のある家、外に人がいるわ」


タオ「お~い、にいちゃん、俺達を一晩泊めてくれねーかー?」


シェイン「泊めてもらう態度ではないですね」



牛飼い「こんな夜中に、、そなた達は旅人か??どこから参ったのだ?」


タオ「俺達はタオファミリーだ、想区を・・うぐっ」


レイナ「ええ、ちょっと西の方から来たの。旅の途中で道を外れて夜になってしまって・・一晩泊めてくださらないかしら?」


タオ「(お嬢、何すんだ・・)」


牛飼い「そのような事情でしたか。異国の方々、どうぞ一晩の宿にお使いください。」


レイナ「感謝します」


シェイン「(怪しまれないほうが特だ、ということじゃないですか?)


タオ「(まあ、お嬢はすぐにボロが出そうだけどな)」





牛飼い「大したものは用意出来ませぬが・・」


レイナ「いえ、泊めて頂けるだけでありがたいですわ」


タオ「(おい、なんか、お嬢のしゃべり方がおかしくねえか?)」


エクス「(きっとレイナにも何か考えるところがあるんだよ)」


牛飼い「申し遅れましたが、私の名は「彦星」と申しまする、異国の方々、特に貴方様は高貴な方とお見受けしまする、どこぞの国の姫君では?」


レイナ「わたくしは、しがない貴族の娘でございます。彦星様こそ、牛飼いならぬ気品ある振る舞いとお言葉、まるで宮殿に暮らす貴族のようにお見受けします」


彦星「・・嬉しきお言葉だが、今は牛を追い、年に一度会えるだけの妻と離れ離れに暮らす、それこそ、しがなき牛飼いでありまする」


エクス「(年に一度って、どこかで聞いたお話だね)」


シェイン「(年に一度と彦星と言えば一つでしょう)」


タオ「(タナボタか!)」


シェイン「タオ兄、七夕です」


彦星「しかし、昨年、そして今年の7月7日には、あの天の川に橋が架からずに、私は愛しい妻に逢うことは叶いませんでした・・私の妻、織姫の父、あの天の神が黒い影に覆われ


、乱心してしまったが為に・・・」


タオ「そりゃ、難儀な話だな、親父さんも気が変わったか、その姫さんにいい相手でも見つかったんじゃねえか?」


レイナ「タオ。」


タオ「ぐふっ!」


レイナ「彦星様の運命の書には、そのような運命が記されているのですか?」


彦星「いえ、一年に一度、最愛の妻と逢える、とだけ記されておりまする・・・」


エクス「カオステラー、だね」


レイナ「彦星様、よくお聞きになってください。実は私達は・・・」



旅の経緯を説明する。



ロキ「カーリー様、お身体の具合はいかがですか?」


カーリー「大丈夫です、ありがとう、ロキ。」


ロキ「今回の想区では、今までには無い試みを施しました、と、言っても実際に行って頂いたのはカーリー様ですから、既にご理解頂いているかと思いますが。」


カーリー「ええ、ロキ。しかし想いを解放した者が創り出すのが混沌の世界、それがこのような方法でどんな結果をもたらすのか、私にも分かりません。最悪の場合は・・・」


ロキ「いずれにしても、今回の結果を見れば明らかになるでしょう。どうやら、想区にも役者が揃ったようです。」


カーリー「・・彼らも到着しましたか。分かりました、少しの間、見守りましょう」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る