ハロウィンの貴族達

歌音柚希

10月30日【朝】

「おーきてーっ!!」

彼の一日は、大概いつもの騒がしい声で始まる。毎朝恒例、セシルによるモーニングコール。……とても要らない。

「やだ」

「えー、やだ」

とにかく短い言葉で会話を交わすと、セシルは徐に掛け布団をリーリュから剥がそうとしてきた。

「やめろー!」

「だってリルが起きてくれないと嫌だもん」

「知るか」

いやにニヤニヤしているセシルの顔が、なんだか嫌な予感を運ぶ。

「ひどいよー、せっかく起こしに来てあげてるのに! ねぇ、リル。今日は何日か知ってる?」

は? 今日は10月30日でしょ。で、気づいた。

……………………あ。


「あああああああああああああああッ!!!!!」


10月30日。それは自分の叫び声から始まる朝だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る