番外編  安田記念―天才の証明(後編)―

※ヒャッッッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

 あの絶望的な出遅れから、スプリングステークスを制した!!

―束の間の喜び

 やはり、タリスユーロスターは皐月賞に出走しないかぁぁ…。

―束の間の喜び×2

 そして俺は、NHKマイルカップに向けて更なる必殺技を習得!!タリスユーロスターへのリベンジに向けて準備万端!!!

―束の間の喜び×3


 タリスユーロスター号、青葉賞出走予定。

―絶望MAX。


 おい…嘘だろ……マイルカップは青葉賞の翌週だぞ…?登録ミスだよなぁぁ…。

 は……!ま、まさか…青葉賞からマイルカップをれれ連闘する気か……!!?



 タリスユーロスター号、青葉賞出走確定。

―絶望MAX。


 …連闘?普通しねぇぇよ…。

 …完全にクラシック路線じゃあねぇぇか…。

 …無理だ……タリスユーロスターにリベンジができねぇぇ…。


 ……………?プレタポルテ?

 1000m通過タイムは61秒1!?

 おいおい…集団と10馬身以上離れているじゃあねぇぇか!!平均ペースなのに!!?


―――80%コンスタントスピード!!!


 残り800からか……まぁ妥当だろうな…。

 さて…先頭のプレタポルテは…っと……―!!!?

 おいおい…もう30馬身くらい離れてねえか!!?直線に入った!!

 おいおい…この勢いは大差勝ちもあり得るぞ!?!?

 ……………。

 結局、プレタポルテが15馬身差の勝利か……。タリスユーロスターは頑張ったが2着か……。

 残念だったなぁあああ!!!マイルカップに出走してたら…まだいい線いってたのによぉおお…。もちろん!俺の2着で!!

 NHKマイルカップに出走しなかったことを後悔するくらい圧勝してやるぜ!!!

 ヒャッッッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア



 GⅠNHKマイルカップ。


 さあ!!最後の直線!!

 先頭は『アマゾネスマーヤ』!!と!!ここでジーニアスブレインが先頭に立ったぁあああ!!!


―――クライム・スティープ・ヒル!!!


(このまま逃げ切ってやるぜぇえええ!!!

 残り2つの必殺技は万一に備えてとっておく!!)


 ジーニアスブレイン!!ジーニアスブレイン!!

『ゲイボルグ』と『エスプレッソカフェ』に鞭が入るものの!!

 ジーニアスブレインとの差が縮まらない!!!

 残り200!!!このままジーニアスブレインが逃げ切るかぁあああぁああ!!?


(よし!このペースだと逃げ切…―


―NHKマイルカップに出走しなかったことを後悔するくらい圧勝してやるぜ


 なぜ…この矛盾に気がつかなかったのだろう…。

 俺が圧勝したらタリスユーロスターは「出走しなくてよかった」と思うのではないのだろうか…?

 もし……タリスユーロスターがこのレースに出走していたら……青葉賞で見せた80%コンスタントスピードで俺の前を走り続けているのではないだろうか……。

 まずい!!タリスユーロスターではなく…俺が…後悔しているじゃあねぇぇか!!)


――ゴールイン!!!!!

 ジーニアスブレインが3歳マイル王者の栄冠を手にしました!!!


「ヒャッッッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 やはり俺は天才だぁあああ!!!!!」

―束の間の喜び


 まずい!!まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい!!

 今でも思ってしまう…タリスユーロスターが出走していたら…タリスユーロスターが出走していたら…タリスユーロスターが出走していたら…と何度も何度も何度も!!!

 そして、いつも俺が負ける……。

 なぜだ…なぜ勝てないのだ……!想像なのに勝てない…!!

 ……………。

 この絶望はいつまで続くのだ……。朝日杯の時は一日だけだったのに……。

 気がつけば、今日はダービーだ………。

 ……………。

 タリスユーロスターは3着か……。

 逆に俺がこのレースに出走していたら……いや…負けてるな……。

 なぜタリスユーロスターは短距離馬なのにクラシックレースに挑み続けるのだ……?

 ……………!(天才的ひらめき)

 そうか!タリスユーロスターではない!俺だ!!俺が挑戦していなかった!!

 だからといって、俺がクラシックに出るわけじゃあない!もう一頭いるじゃあないか、グランディオール。

 そう!俺は、同世代で一番早く!!古馬に挑戦する!!!



―GⅠ安田記念。

 3歳馬が最も早く一流馬と戦えるGⅠ。このレースは3歳馬の出走及び勝馬が最も少ないレース。

 なら…そこで俺が勝てば!!現役日本最強馬グランディオールを倒せば!!俺は天才だということを証明できる!!!※



「予想より早く戦うことになったな、ジーニアスブレイン。

 戦うとしたら下半期からだと思っていたぞ?」とグラディオ。


「ヒャッハアアアアアアアアアア

 俺は天才だからなぁぁ…。これくらいは当然だぁぁ!!」



 1番人気は安田記念2連覇中の6歳馬『グランディオール』1.7倍


 2番人気は前走GⅠ高松宮記念でグランディオールの2着であるが、海外遠征で3戦すべてに先着、勝利している5歳馬『アポロンヘリオス』3.4倍


 3番人気は3歳マイル王者『ジーニアスブレイン』8.1倍


 出走18頭のうちこの3頭だけがGⅠ馬。



―5週連続の府中GⅠ戦も最後ラスト!激闘の火花散る春のマイル王決定戦!安田記念!

 史上初の3連覇か?!あるいは世代交代か?!まもなく発走です!

 実況は私!杉川 清和!!

 そして解説は!この作品の作者!ジャンゴでお届けします!!


「最近、なろうのPVが先っちょ!先っちょだけ伸びてうれしいなあ!!」


 あなたは黙っていてください!


 ファーッ!?ファファファーッ!!?ファファファーッ!!?(ファファファー)

 ファファファーッ!!?(ファファファー)ファファファーッ!?(ファファファー)

 ファッファファーッ!!?ファーッ!!?ファーッ!!?ファーッ!?ファーッ!?ファーッ!!?

 ファーッ!?ファーッ!?ファーッ!?ファーッ!!?ファーッ!?ファーッ!!?

 ファファファーッ!!?


―各馬順調にゲート入りしております!

 最後に18番『ミスアンドロメダ』が入り!

 体勢完了!スタートしました!!

 横一線綺麗なスタートです!

 先行争い!前に出たのは9番『クィジャヴィーノ』!外に12番『ブレイブスピリット』!さらに8番『エイショウカーン』も上がってきた!6番『グランディオール』も間から!

 内に3番『アポロンヘリオス』!並んで10番『ジーニアスブレイン』!外に15番『カヤノミラクル』!アポロンヘリオスの内に2番『ワンダフルターフ』が上がり!

 4番『フィーチャークロック』!9番『キタコレアーチ』!16番『ブラッドリークライ』が固まって!

 先頭集団は11頭の団子状態だぁああ!!


(まずい…!

 前も、内も、外も、後ろも防がれた…!!

 しかも、まだ600しか走っていないから何とも言えないが、スローペースのよに感じる…!

 まずい…!このままだと最後の直線までチンタラ走ることになる…!つまり!地力で劣っている俺が不利になる…!!)とジニブレは焦っていた。


「どうした?もしかして今さら気付いたか?すでに囲まれていることを。」とアポロンがジニブレに話しかけてきた。


「はっ!別にたいしたことじゃあないぜ!

 それになんだこのあからさまなマークは…!俺を警戒し過ぎじゃあないか…?!何?ビビッてんの??」とジニブレは煽った。


「ああ、怖いね。

 ビビる?そんなことはない。お前のような馬をマークするのは当然。

 俺だけじゃない。みんなは…古馬は…わかっている。互いに互いをマークし合うことを。」とアポロンはかなり余裕そうだった。


「お前もマークされていることを忘れてないだろうな!!もちろんグランディオールもだ!!」とワンダフルターフがアポロンに言い、アポロンは「フン…!」と鼻で答えた。グラディオは反応無し。


「何さっきからイライラしてるんだ?古馬戦ならこれくらいは当たり前。

 今まで『かけっこ』している3歳馬お前たちとは違うんだよ。」とアポロン。


「かけっこだとぉぉ…。」


「お前、今までこんなふうに囲まれたこと無いだろ。

 お前、必殺技使った時、不利受けたこと無いだろ。

 逆にお前は、他馬が何かした時邪魔しようとしたこと無いだろ。

 で、そうなったら相手のことを考えず、自分は『足を溜めよう』とか『前に出よう』とかしか考えず、パカパカ走るだけ!!

 お前はこのまま沈んでろ。」


「…チッ。

(確かに…新馬戦も、新潟2歳Sも、デイリー杯も、朝日杯も、スプリングSも、マイルカップもすべて…自分のことで一杯一杯だった。

 他の奴らを邪魔する発想すらなかった。なぜなら、不利と進路妨害の境目がわからないからだ…。それをするともしかしたら失格もあり得るからなぁぁ…。)」


さあ!最後の直線!!先頭集団はまだ固まっている!!


「くっそ!!マジか!!

(一応広がったがグランディオールが前に陣取ってるから前に出られねぇぇ!!

 それ以外の奴らも左右に行ったり来たりしてるから全然いける気がしねぇぇ…。

 ……………!!アポロンヘリオスが間をくぐってもうすぐ先頭に立つ…!!

 なら俺も!!)」


「なぜ俺がジーニアスブレインの前にいたかわかるか?」とグラディオはつぶやいた。

 集団は気づかなかったが―


「(どういうことだ??)……………!(天才的ひらめき)なるほど。

 ……………!!(天才的ひらめき×2)そういうことか…グランディオールが引退しない理由は……!!)

 てめぇえのそういうおせっかいは大っ嫌いだぁぁあああ!!!」とジニブレは笑いながらそう叫んだ。


―グラビティアドバンス!!!


 効果―スピードステータスを1段階上げる。ただし、ステータスAの場合、Sに到達せず、Sに近いAとなる。

 グランディオールの鞭ありの必殺技。全盛期はこの効果を鞭無しでできたが、体が衰え、鞭ありでしか発動できなくなっている。


グラディオは前に出て、ジニブレが出られる空間を作った。グラディオの必殺技と同じタイミングでジニブレは必殺技を使い、集団を抜け出した。


―――クライム・スティープ・ヒル!!!

!!さらに!!

―――リカバーグラウンド!!!


「ヒャッッッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 グランディオール!!グランディオールが先頭!!!

 ジーニアスブレインが2番手!!!いや!!大外から17番『オーラブレード』がやってきて!先頭に立つ勢い!!!アポロンヘリオスは伸び悩んでいる!!!


「俺の3つ目の必殺技を発動する。」


―――セイム・ハイスピード!!!


「説明しよう!!

 セイム・ハイスピードは馬を一頭対象にし、同じスピードになる必殺技!!

 対象はもちろん!グランディオール!!!」とジニブレはドヤ顔でそう言った。


「バカが!俺の方がはや…―……!!!

 いや!グランディオールがさっきより早くなっている!!

 いや、それでも!同じスピードならグランディオールに追いつかない!!」とオーラブレード。


「ヴァかが!!!確かに同じスピードだが……クライム・スティープ・ヒルと登山下山アップ&ダウンザヒルで追加上乗せだ!!!」


「な、なにィィィ!!!」


「ヒャッッッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

 ――……!!!!!

 何だ!!?この痛みは…!!?」


「お前は今、『絶対領域の壁』にぶつかった。」とグラディオは説明した。


「……これが噂の……!!」


「絶対領域…ステータスSの領域。その行く手を阻む高く分厚い『最後の限界の壁』。

 俺は何度も挑戦したが越えられなかった。

 お前は越えられるか???ジーニアスブレイン!!!」


「フッ…『越える』か……『壊す』じゃあなくて??」


「――……!!!!!

 待て!!それはやめろ!!!」


「ヒャッッッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

(ヤバい!ヤバい!!ヤバい!!!ヤバい!!!!ヤバい!!!!!)」


「バカな!!俺と同じ過ちを犯すつもりか…!!!」


「馬鹿が、何を言っているんだ?」とジニブレはいつもの勢い任せの口調と裏腹に、ゆっくり、丁寧に、はっきりとそう言った。

「同じ?『俺はお前と同じ道を歩まない。』1年前、そう言ったの覚えているか?」


「……………。」グラディオは無言で返した。


「俺は天才だぁぁ!間違いなく!!

 だが、自称だ。俺はまだ天才だと証明していない。

 だから絶対領域に到達できれば、俺は!!!名実ともに天才だと証明できる!!!!!

 俺が目指しているのは日本最強馬でも、世界最強馬でもない!!

 天才だと証明することだ!!!!!

 まぁ、その過程でお前を超え、世界最強馬になるかもしれないがなぁぁ…。」


「フッ…。

 なら俺も…若かりし頃のように絶対領域の壁を『壊す』としよう!!!」


「はっ!!

 今までできなかったにかぁぁ?」


「俺は日本最強馬だ!!!!!」


「ヒャッッッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」

「はぁあああぁああぁああああぁああぁあああぁああああぁあああ!!!!!」


 グランディオール先頭!!!ジーニアスブレイン半馬身食い下がる!!!

 のこり100!!!


「グランディオール、お前、壁にヒビが入っていないじゃあないか。」


「お前もヒビが入っていないじゃないか。」


「『無事之名馬ぶじこれめいば』という言葉がある。能力が多少劣っていても、怪我なく無事に走り続ける馬は名馬であるという意味だ。

 つまり!!体を怪我しても無事ならば史上最高名馬になれるということなんだよ!!!!!」


「待て!!矛盾してる!!!やめろ!!!」


「衰えたお前とは違い!俺は!!成長過程にいる!!!

 ヒィイャァッッッハァアアァアアアアァアアアァアアアァアアアアァアア!!!!!」ジニブレの体にヒビが入った。


 ジーニアスブレイン!!!ジーニアスブレイン!!!ジーニアスブレインが先頭に立ったぁあああ!!!

――ゴールイン!!!!!

 ジーニアスブレインが世代交代の引導を渡したぁあああぁああああ!!!!!


「ヒャッッッハアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!

 俺は天才だあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」

―満面の喜び。


「……………。

 大きな大輪の花を咲かせろよ。」とグラディオ。


「あぁあん?」


「お前はまだ成長過程にいるんだろ…。」


「……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………(一瞬の間)。

 …フッ。

 見たことも無いでっかい花、見せてやるよ!」


「そうか…。

(俺の役目を果たした。引退するか…。)」数日後、グランディオールは引退を発表する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る