Lv30「不死王の世界征服13~汎人類大連合、壊滅~」

汎人類大連合の会議の席で、スターは不満気に頬をピクピクっと引き吊らせていた。

先日までは、この場に、合計千人ほどが居たのに――今では半分ほどに減っている。

どうやら、汎人類大連合に居たら、人間王国で起きたような大虐殺の対象になると、各国の首脳は考えたようだ。

残った面子も不安そうに、常任理事国の様子を窺っている。

これでスターが弱気な態度を見せたら、連合は離散し、人類の抵抗の盾は失われてしまうであろう。

共産国のアイドルとしては、ここで――強気な面を見せて乗り切るしかない。

ドンッ!

テーブルに、スターは小さな右手を勢いよく叩きつけた。痛くて涙目になりそうだったが、かなり我慢して叫ぶ。


「裏切り者には血の制裁をっ!

人類を裏切った罪に死を!

アンデットは土に返せ!」


「人類同士が闘っている場合じゃないにゃー」


スターの物騒な宣言を、ニキータの発言が食い止めた。

それに追従するように、鬼姫が馬鹿にしたような顔で、扇子を展開し、スターを言葉攻めしてくる。


「離脱した国を攻撃したら、必死に徹底抗戦するんじゃよ?

そうなったら、喜ぶのはワルキュラだけじゃよ?

これだから、血にまみれた共産主義者は困るのう」


私も、連合を離脱していいかなぁ?とスターは思った。

商国と鬼族連との仲が悪すぎる。

だが、ここで最大勢力である共産国が抜けたら、連合の意味がなくなり、人類には破滅がまっているはずだ。

ワルキュラの人間王国の高度を焼いたサン・レイ。あれにすら対抗手段が思い浮かばないが、手はある。

帝国には、構造上、致命的な欠陥が無数にある。

他民族国家だから、アンデットを皇帝に頂いても、人民はワルキュラに敬意を注げないはず。

生者と死者、相容れないはずの存在が隣り合わせで生活しているのも大問題だ。

そして何より――


「帝国には、致命的な弱点があるわ!

ワルキュラの後継者が居ない事よ!」


ワルキュラには嫁はいるが、子供が一人も居ない。

かの悪の帝王さえ倒せば、帝国はその巨大すぎる国家機構を支えきれずに内部崩壊を起こし、自滅する。

簡単だ。とっても簡単だ。帝国全部を相手にするよりは、遥かに簡単すぎるミッションだ。

ワルキュラ一人を倒せば、ゲームのように決着が付く。


「暗殺でもするのかにゃ?」


ニキータが笑顔を崩さずに、スターに問いかけた。

一応、国際会議の席だから、問題ありすぎるかもしれないが、強気な威嚇外交こそが共産国のテンプレ。

スターは自信満々な顔で、小さな胸を反らし、言い切る。


「違うわ、成仏させるの」


「成仏は暗殺の隠語かの?

国際会議の場で、暗殺発言とは……共産主義者は恐ろしいのう」


「いえ、成仏よ、暗殺じゃないわ。

相手は人間じゃないの。

死人よ。死人を殺しても問題にならないわ。

ワルキュラを倒しても、殺人にはならないのよ、ルール上。

むしろ、宗教的には良い事じゃないかしら?」


ワルキュラの怒りが、自分の共産国に降り注ぐかも知れない。

その恐怖で、華奢なスターの身体は震えそうだった。

だが、死ぬ最後の瞬間まで、共産圏のアイドルとして、自分自身の行持を貫きたい。

富を平等に分配する共産主義は、きっと正義なのだから。

今は不幸を平等に分配している最中だが、将来的にはきっと、幸福も配れるはずだ。


「私は共産国最強の成仏の達人……もとい、外交の専門家ミスター・ボンドーを送るわ」


ワルキュラの喉元に届き得る。唯一の可能性、ミスター・ボンドー。

どんな状況からでも生還し、標的を仕留める人類最強の男。

正直、何時、自分の生命が狙われるか分からないから、飼うのも辛い。


「わっちの国で、散々、暴れた奴じゃろ!?

暗殺したいなら、黙って実行せんか!」


「煩いわね!アンタ達も凄腕を送りなさい!

人類の危機なんだから、アンタ達も労力を払うべきよ!」


「いやじゃ!

暗殺を正々堂々とやりまくっている共産国が可笑しいじゃろ?」


「人類の命運がかかった問題だから良いのよ!

普通の成仏なら、僧侶呼んでこっそりやるわよ!」


「お前さんの国の僧侶は、あの世に居るじゃろ!?」


「僧侶なんて詐欺師じゃない!宗教なんて麻薬よ!」


「唯物論者はこれじゃから困るのう!」


幼稚に見える罵倒の連続。

だが、これが国際社会の現実だ。

帝国という共通の敵が居なかったら、こうやって一緒に集まる事すら出来ないくらい、どの国も仲が悪い。

スターは、共産主義者であり、この思想には無神論もセットで付いてくる。

全世界を敵に回す条件が揃いまくっている危険人物なのだ。

暗殺の危機を感じてから、また、神様への信仰を再開したが『神を信じない碌でもない悪魔』という評価を受けている。


(神様なんて、皆がそれぞれの心の中で信じていればそれで良いのよ。

人間が作った神の教義ばっかり守って馬鹿みたい)


スターだって出来れば、鬼族連とニャンコ商国と協調して、帝国を打倒したい。

その後に、すぐ裏切って二国を潰して、全世界に共産主義の素晴らしさを教えて、平等社会を建設したかった。

……そんな考え事をしていて、スターは理解した。

商国も鬼族連も、帝国を倒したら、今度は共産国が世界の敵になると理解しているからこそ、無視したり、罵倒してくるのではないだろうか?


(ひょっとして、汎人類大連合が団結できないのって……私が原因だったり?)


「わっちの国は暗殺者は送らん!

まだまだ、決戦の日は遠いんじゃよ!

機が熟するまで待った方がええのう!」


「そうにゃー、まだまだ時間をかけた方がいいにゃー」


鬼姫もニキータが全く賛同してくれない。

このままでは、悪の帝王ワルキュラが全世界を支配し、全てが手遅れになるというのに……。

骨だけで構成された化け物に支配された世界じゃ、スターはストレスで肌がボロボロになりそうだ。

まだ、結婚もしていないのに、この身体を許す男を見つける前に、肌がボロボロになるのは嫌だ。

スターは、決着が付かない議論を続けながら、夢の世界で出会った、古い幼馴染を思う。


(ワー君……。

もう、人類社会。駄目かもしれない……。

ミスターボンドーに全てを託すしかないわ……)


そのミスターボンドーが勝利して帰ってきたら、どうしよう。

ワルキュラを暗殺できる化け物が居たら、それはそれで不安だ。

ミスターボンドーに毒でも盛って、暗殺しちゃうおうからしら?


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現実



フィリピンの大統領「この娼婦の息子wwww」



アメリカの大統領「首脳会談やめーた」





商国(帝国に高く売れる情報にゃー。

ミスターボンドーを売り飛ばして、吾輩の安全を確保するにゃー。

共産国は怖いのにゃー)



【内政チート】アメリカ「世界中の人財が、アメリカの富に惹かれてやってきてチート」

http://suliruku.blogspot.jp/2016/08/blog-post_44.html

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