Lv10「不死王と発明エルフ~何でもツクール~」

邪悪な夜が訪れた。

死者達が活発に動き、バリバリッと働き始める労働時間帯だ。

帝国の駅は、骸骨と人間が通勤ラッシュ。

コンビニは週刊誌を立ち読みする骸骨なフリータだらけ。

一応、大帝国の皇帝として君臨しているワルキュラも、この時間は公務に費やさねばならない。

属国から転移魔法で、一瞬で移動し、宮殿へと帰還した。

歴史ある荘厳な宮殿を見て、ワルキュラは――24時間、遊んだり働く俺格好いい――という自己陶酔に浸り、玄関口から宮殿へと入る。

すると――入口に、妖精のように可憐なエルフ娘がいた。

金髪で、巨乳で、どこか天然そうな女の子。ワルキュラの魔法の師であり、嫁の一人であり、魔法の開発をやっているアトリだ。


「ワルキュラ~、おはようなのです~」


彼女は、ワルキュラの姿を見ると、満面の笑みを浮かべて挨拶した。

ワルキュラは内心で、何かやらかしたな、という不安を感じながら、頷き返す。


「早速ですが、凄い発明品を開発したから、見て欲しいのですよ~」


「うむ、アトリ師匠の発明なら……きっと凄いのだろうな、うむ」


「これなのです~」


玄関口に、発明品が既に置かれていた。

それは白い外装の大きな箱。

人が十人くらい、スッポリ入れそうなサイズである。

何に使う道具なのか、ワルキュラは、さっぱり想像できなかったから、アトリに問いかける。


「……アトリ師匠、この箱は何だ?」


「完全自動の無人工場なのです~。

メンテナンス要らずで、小さい魔法人形が細かい作業をしてくれる優れ物なのですよ~」


「おお……凄いな……

この箱があれば、何でも生産できるのか……」


「これで我が国は最強なのですよ~。

人件費ほぼゼロの工場を大量生産して、世界征服なのです~」


「……人件費ゼロ?」


「どうしたのですか?」


「この箱……封印指定な」


「な、なぜなのです!?」


「労働者が軒並みっ!失業してっ!社会がぶっ壊れるだろ!?

国民全員がニートの国を、どうやって上手く建設しろと言うのだ!?

現状でも、結構、精一杯な気がするぞ!?」


「ひ、ひどいのです!

せっかく、一生懸命考えて作ったのに!

封印なんて可哀想なのですー!」


「わ、わかった!

軍事関連にだけ使おう!

市場が狭くて無駄に高くなる兵器を、これで量産しよう!いいな?」


「え?民生品を作っちゃ駄目なのですか?

これを使えば、国際市場を独占できて、ウハウハなのですよ?」


「俺の話を全く聞いていない!?

そんな事したらっ!世界が滅亡するからっ!

理解してくれ師匠!」


「発明品は子供のようなものなのです~。

せっかく、この世に産まれてくれたのだから、最大限、性能を発揮して欲しいのですよ~」


豊満なエルフ娘が抱きついてきた。女の子らしい良い匂いがして、ワルキュラの心が満たされるが――

(駄目だっ……!

この姉属性持ちのエルフっ……!

放置したら、帝国が滅びかねないっ……!

これだから馬鹿な天才は困るっ……!)


発明で一気に国が崩壊しそうだから、ワルキュラは戦慄した。

でも、地方軍閥やっていた頃から、親切に付き合ってくれるアトリを嫌いになれるはずがない。

未だに二人の間に、子供が出来てない事を考えたら、この仲の良さを維持できるのは、奇跡と言っても過言ではなかった。


「そういえば、子供と言えば、まだリアル子供を授かってないのです。

今日は私と寝るべきなのですよ~」


誘惑してくるエルフ娘を、そのままベッドにお持ち帰りした。

ワルキュラは骨である。だが、人一倍、愛に敏感で飢えていた。





彼は人知れず、ベットの上で変身魔法使って、ハッスルして、家庭のお父さん達が無職になる事を防ぎ、世界を救ったのだ。






狐娘「やったー!

私の出番がないっー!モッフフー!

……と思ったら、夜は仕事がないから、何の意味もなかった!もっふぅ!」

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