Lv7「不死王、宇宙人に誘拐される①~駆逐艦撃破~」

タコに近い外見を持つドゲス星人。その中で指導者っぽい立場を頂いているゲェス提督は、赤い触手をウネウネさせて、タコ踊りしながら動揺していた。


「馬鹿な!

こんな生物が存在する訳がない!」


彼の目の前には、物珍しそうにSFチックな船体を歩き回る巨大な骸骨がいる。

恐怖の帝王ワルキュラ。不死者の王だ。

何もない眼窩を真っ赤に光らせて、不気味な存在感を放っている。


「なぜっ!生きている!

こいつは化物か!

科学を舐めるな!ファンタジー骸骨がっ!」


話は少し時間を遡る――


~~~~~~~~~


大きさがバラバラの銀色の円盤が、宇宙空間に何千枚も漂っている。

それは宇宙という広大な海を旅する船であり、生活空間だ。

タコのような手足が、たくさん生えているドゲス星人は、そこで暮らし、卵を産み、墨を吐き、そして……水が豊かな星を見つけては侵略し、高い値段で売りさばく生活をしている。

宇宙の遊牧民族みたいな生活をしているドゲス星人の指導者ゲェス提督は――宝石を手に入れた子供のように喜んでいた。


「ふはははははっ!

素晴らしい星ではないか!

恒星から適度な位置にあって、液体状の水資源が豊富な星は珍しいぞ!」


長い航海の末に、理想的な星を見つけたのだ。

その星は、とっても美しい青色が表面に広がっていて、何度見ても飽きそうにない、魅惑的な輝きを放っている。

ゲェス提督の部下ノラも、タコの触手をウネウネさせて、侵略欲が刺激されて喜んでいた。


「そうですね、提督!

きっと高く売れますよ!」 


「馬鹿もーん!

こんなに豊かな星は、自分たちで開発した方がお得だ!

さぁ!さっさと、現地の住民を誘拐しろっ!遺伝子と、文明レベルを探るのだ!

高く売れそうな生態系だったら、ある程度、保存した方がいいからな!」


「ご安心ください!1匹、誘拐してきました!

砂浜で、文字らしきものを書いていたから、きっとこの星を支配する知的生命体だと思われます!」


「ほぅ!仕事が早いな!

早速、調査結果を見せろ!

文明レベルが低かったら、さっさと皆殺しにして惑星を改造するぞ!」


「もう来てます!」


「んっ?」


ゲェスが疑問の声を上げた途端――艦橋へと繋がる扉が、鈍い金属音を出して悲鳴を上げた。

IDカードがないと、開かないはずの頑丈すぎる扉が、綺麗に物理的に蹴り飛ばされて――巨大な骸骨が入ってくる。


「やぁ、宇宙人の皆さん、こんにちは……?

ハローハロー?ニーハオ?コニャニャちわー?

言葉が通じているのだろうか?

扉の開け方が分からないから、壊した。すまん」


悪の帝王ワルキュラだった。穏やかな口調で、ドゲス星人たちに話しかける――が、使っている言語が違うから、意思の疎通はできない。

ゲェスは、部下が仕出かした不祥事に、真っ赤なタコ顔を、更に赤く染め上げてノラを問いただす。


「お前!どうやって、生きたまま拉致った!?

危険を犯して、降下艇を使ったのか!

もしも文明レベルが高い惑星だったら、どうするんだ!」


「いえ、普通にトラクタービームで、星の表面から直接、引っ張って捕獲しました!」


「その方法ならっ!あの生物は大気がない真空空間を通ってきたはずだっ!

なら、なぜ生きている!?

普通の生物なら、大気に依存しているから死ぬはずだ!」


「わ、わかりませんっー!

どうやら、この生物は、大気に全く依存していないようです!

ありえない進化を遂げたとしか言いようがありません!」


「では、どこからエネルギーを得ているというのだ!」


「わかりません!」


「ならば、今すぐバラバラにして調べるのだ!

これは、ひょっとしたら……星以上の価値があるかもしれん!」


「アイアイサー!」


「ハローハロー。

宇宙の皆さん、こんにちは。

俺は友好的な骸骨、OK?

俺、星の支配者。とっても偉い。VIP待遇を希望?

宇宙人との対話が難しいっ……!

どうしてこうなったっ……!」


自由に動き回るワルキュラが大人しくなるまで、円盤型の駆逐艦10隻が犠牲になった

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