第9話 『始まり』
俺こと森海
ギィィィィィィ…
なんの音かと思い上を向こうとした次の瞬間、振動と共に目の前で凄い音がしたかと思うと砂埃が舞い上がった。
一体何だと散っていく砂埃の舞う方向を目を凝らしてよく見ると、今最も望んでいた姿があった。
「(人!!?)」
そう、そこには人がいた……と、思っていた。
しかしよく見ると違和感がある。手前にいる少年をよく見ると頭に小さな角のようなものが生えている、こちらはコスプレとも言えるだろう、しかし不思議なのは足だ、普通コスプレでわざわざ足を太くしてヒヅメを付けるだろうか? しかも容姿は子供、とてもコスプレイヤーには見えないし何というか違和感がない、まるでこれが普通の様に見える。
とうかこんな山奥までコスプレイヤーが出始めたら一種のホラーである。
まぁ考えても仕方がないので話しかけることにしよう。
「あのー……すいません、ちょっとお伺いしてもいいですか?」
そう言いながらふと横を見るとまるで「任せた」というような顔をしている
すると男のほうが答えてくれた。
「ん? こんなところで何してるん…」
しかし途中までいうと変なものでも見るかのようか顔で俺たちの全身をジロジロ見てきた、向こうの少女もである。
「何だその格好、それと角がねぇけど…おめぇ人間族か?」
あ、狩衣だったの忘れてた、これは不審者扱いされても仕方ない。しかし最後の言葉の意味がよくわからない、『人間族』? 勿論人間である、というかそれ以外の知的生命体なんて宇宙人以外いないだろう……と、いつもは考えてたんだろうが今日は違った。数十メートルはある巨木、巨大なキノコ、ドラゴン……そして目の前にいる『人間に似た何か』、それが『ありえない』という思考を掻き消していた。
そして「人間族」と言った時、彼の目が変わったものを見る目から『敵を見る目』のようなものに変わったのも気になる。その事も踏まえて俺は慎重に返答することにした。
「…この服は狩衣といって神主……神官のような人が着る服です、彼女の服は巫女
装束といってこっちも神官みたいな人が着る服です。それと……俺たちは人間で
すよ」
「「!?」」
人間と言った瞬間二人の顔つきが変わった、完全に俺たちを警戒している。
だから―――
「俺らからも質問させて下さい、ここはどこですか? それと……人間族ってどう
いう意味ですか?」
俺が二人に質問をすると初めの『変なものを見るような目』でこちらを見てくる二人・・・・嫌な予想の方だけど予想通りだ。
すると女の子(?)の前に立つようにして男の子だと思わしき方が答えてくれた。
「どこだって? ここはギャラド王国のダネ村だよ。へっ、お前ら人間族からした
ら
……聞いたこともないけど如何にも悪の国って感じの名前だなと思ったが、まぁまだ話は続いているので話し終わるまで待つとしよう。
「それに訳分かんねぇ事言ってんじゃねぇよ、人間族とはなんだって? 俺らの仲
間を殺して何もかも奪った奴らのことだよ!!」
……ダメだ、このままじゃ会話もろくにできそうじゃない、それどころかいつの間にか悪人にされてる。このままじゃ捕まりそうな勢いだ。作戦そのニに変えよう。
「あの・・・・仰ってる意味が全くわからないんですが・・・・ホーガってなんで
すか? すいません俺達さっき起きたらこの森の中にいて、このあたりの事は全
くわからないんです、それとさっきから『日本語』を喋られてますけど貴方たちは
『日本人』ですか?」
その言葉を聞きますます不可解な顔をする二人、そんな顔をしたいのは俺なんだが……さっきから神生は俺をじーっと見て俺に丸投げしてるし……まぁ世界中どこを回っても日常的に日本語を喋っているのは日本人だけの筈、日本独自の言語なのだから当たり前だ。少なくとも外国人の子供は日常的にネイティブ並の発音で日本語を喋ってないはず……うん、ない筈だ……。
なんてこと考えて俺が少し不安な顔をしてたらやっと答えてくた。まぁまた良い方じゃない予想通りの答えだったが……。
「『日本語』? 『日本人』? そんな国聞いたことねぇし俺が喋ってんのはカ
ララ大陸共通語だよ、意味分かんねぇ事言ってんじゃねぇよ」
出ました新単語、今日は発見の日だね、うん。
まぁ単語からして大体意味は分かるけど一応聞くことにする。
「カララ大陸? ユーラシアじゃくて?」
「は? なんだよその『ゆーらしあ』ってのは、聞いたこともねぇっつってん
だろ、お前それでも人間族か?」
デスヨネー何かごめんなさい。
……しかしこれで確定した、ここは
『異世界』だ
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