帰り道

神坂奏汰

第1話

 翔一から「地元に帰ることになったから、ほしい家具や電化製品があったら譲るよ。」という連絡を受け、彼のマンションを訪れた。

 部屋に上がると、「今、親と電話してるから、適当に座って待ってて。」と言われ、仕方なくリビングで待つことにした。


 ダイニングテーブルには電源の入ったノートパソコンが置かれていた。

ベランダを見ると、翔一が深刻そうに話をしている。長くなりそうだなと思い、目の前にあるノートパソコンに手を伸ばした。


 翔一とは中学校からの付き合いで、同じ時期に上京した一番仲のいい友人だ。

『山中第三中学校』俺たちが通っていた中学校名を入力すると、画面に中学校の公式HPやコミュニティ情報が並んだ。画面の上にある『地図』をクリックし、右下にある人型マークをドラッグして、中学校の位置まで持っていくと、校舎の画像が映し出された。ストリートビューってやつだ。


 校舎は俺たちが通っていた時よりきれいになっていた。マウスをクリックすると、まるで歩いているかのように画像が切り替わる。


 よし、中学校から家まで帰ってみよう。


 当時の記憶を思い出しながら、正門からスタート。

まず、最初は駄菓子屋の角を曲がる。駄菓子屋を目指しマウスをクリックすると、駄菓子屋は新しい家に変わっていた。


 まぁ、十五年も経つとそうなるわな。


 次は思いを寄せていた由香ちゃんの家。前もって撮影された画像なのに、彼女の家の前を通る瞬間なぜかドキドキした。

そして次は、よくお菓子をくれた柿おばあちゃんの家。立派な柿の木はもうなかった。

そうしているうちに、家の近くまで来た。


 よし、この角を曲がれば我が家だ。

 あの頃、母ちゃんは毎日おいしいご飯を作って待っていてくれたなぁ。


 カチっとマウスが鳴ると、画面に我が家が映った。

「ただいま」思わず心の中で呟いた。

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帰り道 神坂奏汰 @Lucia_k

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