不発弾

家を出た

手紙も机に置いてきた

どうしようもなく沈んだ気持ちで走ってきた


崖に来た

きっとここから落ちたらただではすまないだろう

そう思いながらも僕は歩を進める

崖の端に近付いたら 地と空の境界線がどこまでも続いているのが見えた

こんなものを見て死ねるか と思い山を去った


防波堤に来た

きっとここから飛び込んで溺れたら苦しいだろう

そう思いながらも僕は歩を進める

防波堤の端に近付いたら 海に線を描く沢山の船が見えた

こんなものを見て死ねるか と思い海を去った


もう僕が死ねる場所はないだろう

山も海も僕が死ぬことを許さない

今の僕はまるで深い深い地の底に 深い深い海の底に沈んだ不発弾のようだ

そうか

だから目に映るものがとても美しく感じるのか

僕にはまだこんな感情が残っていたんだ

何故か心と身体が軽くなった気がする

今は少しだけいい気持ちだ

もうあの場所に行くことはないだろう

明日も明後日も

来年も再来年も

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