誰が勇者を殺したの、
天野 アタル
プロローグ
酸化しはじめた赤の上には、毒霧のように濃厚な絶望が立ち込めていた。
「おい……蘇生は、蘇生魔法はどうした‼︎」
青ざめた顏で
「たっ、た、試しました、なんども、何十回も! で、で、でもっ……」
「蘇生魔法は心臓が停止してから数分以内に施す必要がありますわ、効果が現れないなら……もう……っ」
視界を手で覆い
「うそ、こんな、だって」
「勇者ぁあ……!」
「どういうことじゃ……なぜ、このようなことに」
その横で
なにか悪い夢をみているんじゃないか。
ワタシだけじゃない。ここにいる全員がそう思っていたことだろう。
◆◆◆
最果ての街に到着したのは、今から数十時間前だ。
最果ての街は、その名の通り世界の果てに存在する。かつて多くの種族が共存し、魔術と技術によって栄えていたそうだが、魔王の君臨により最初に地図から消失した。
しかし消失したと言っても人が住めなくなっただけで街はほぼそのまま残されており、ワタシたちと勇者さんは、最果ての街の上空に浮かぶ魔王城攻略のため、最終決戦に備え今日をこの荒廃した街で終えることに決めた。
街に
その、数時間後――。
今にも倒れてしまいそうな僧侶の一言で間も無く終わりを迎えようとしていた旅は思わぬ方向へ、いや、全てがひっくり返ったのだ。
明日にはこの世界を救うはずだった勇者さんが、部屋で血を流して死んでいたのだから。
世界の希望が、動かぬ遺体と成り果てていたのだから。
そして、けして亡き者にさせぬよう、数年の歳月を懸け、勇者さんを護り共に戦ってきたワタシたちは、一人としてこの事実を冷静に受け入れることはできなかった。
何故勇者さんは殺されたのか――。
誰が、勇者さんを殺したのか――。
この先の世界の命運よりも、誰もがそれを知りたがった。
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