第15話ビーストハンター 第2話 「東京租界に死す」(4)
「おぉ、お帰りソルジャー…こっちは片付いたよ。そっちはどうだった?」シュンが言った
「あぁ、終った」
ジョーはそっけなく答えて、少女を肩から下ろした。
「帰りを待っとたで~…で、何やねんその子は?」少女を見たヒジリが怪訝そうに尋ねてきた。
「俺が母親を巻き込んでしまってな」
「難民だろ…なら、問題ないじゃん。市民以外ならビースト法には引っ掛からない」
シュンはあっさりそう言ったが、生真面目なジョーは気に病んでいた。
「いや、俺の油断が招いた事だからな」
「で…どうするん?その子」ヒジリは再びジョーに尋ねた。
「連れて帰って何とかするしかないだろうな。みなし児になってしまったから」
「そうかぁ…ま、それならしゃぁないわな」
「取りあえず検死官が来るまでビーグルん中入ろうよ。雨に濡れるし」
「そうだな」
シュンはビークルのバックドアを開けて、カイザーをケージの中に入れた。
ジョーはヒジリにボルテを預けると、ひょいと少女を抱え上げてビークルの中に入った。
イェーガーが犯罪を犯したビーストを始末した場合は、警察の検死官を呼んで現場検証を行なわなければならない。
そうして、初めてビーストのクラスと始末した人数に応じて彼らにランキングポイントが与えられる。
イェーガーが稼いだポイントは、ひいては警備会社の格付となりイェーガー自身の個人収入に反映される。
狩人として腕のいいメンバーを有する音羽警備は、零細ながら大手の警備会社に伍して上位にランクされていた。
今回のような大量処分のケースではポイントは山分けとなり、個人ランキング上位を狙うシュンにはおいしい仕事だった。
どうせヒジリは自分にポイントを分けてくれるに違いない…ヒジリは個人ランキングにはまったく興味を示さないからだ。
だが、ランキングポイントを稼ごうとしないヒジリには、ヒジリなりの深い理由があるのだった。
待つ事しばし、ようやくやって来た検死官と現場検証を済ませたイェーガーたちは仕事を終えて帰途に着いた。
ビークルの窓から見えるよどんだ「東京租界」の町並みが、どんどん後ろに遠ざかっていった。
最初に車に乗せた時は、珍しそうにキョロキョロと周りを見回していた赤毛の少女も、待ちくたびれたのかいつの間にか眠っていた。
「母親が死んだっちゅうのに、ようスヤスヤと寝られるもんやな~」運転しているヒジリが言った。
「子供ってそんなもんっしょ…俺も小さい頃、親よりゲームの方が大事だった」助手席のシュンがあっさりと言った。
「それはネトゲに限っての事やろ…なぁ、ソルジャー?」
「俺は達摩の親父に巡り会うまで親がいないも同然だったから分からん」
後部座席のジョーは、シートにもたれ掛かって眠っている少女を見ながらそう言った。
彼は、みなし児になってしまった赤毛の少女のこれからを険しかった自分の人生に重ねていた。
~続く~
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