第5話ビーストハンター 第1話 「狩猟免許と言う名の殺人許可証」 (4)

「ネトゲ。お前、処分しちまったのか?」ツクモはシュンに尋ねた。

「あぁ、ちょろすぎて面白くもないゲームだった」シュンは事もなげに答えた。

「生かして確保しろって指示だったぞっ!」ムッ!としたツクモが声を荒げた。

「ぶっ放した時点で、レベルスリー(*) 確定っしょ」シュンは平然と言った。

「まぁ、そりゃぁそうだけどな…けど、人質の女の子がいたろ。どうなったんだ?」

 そこへシャルクのチベタンマスチフの「ルージュ」を連れて、人質にされていた女の子を抱いた雨宮ウズメが現れた。

 やっとこさ緊張の糸が解けたのか、女の子はウズメにしがみ付いて泣きじゃくっていた。

「シュン!あんた危ないよぅ…この子に何かあったらどうするつもりだったんだい?」

「だって、あぁでもしなきゃぁ人質放さないっしょ」

 ウズメはシュンを責めたが、彼はまったく意にも介してない様子だった。

 それを聞いてツクモが再び怒り出した。

「お前、また無茶やったのかっ!?」

「へへへ~」シュンは笑ってごまかした。

「こんな危なかっしい事ばっかりやってたら、その内、狩猟免許取り消し喰らうぞっ!」

「まぁまぁ、そないに怒らんでも…結果オーライ。一件落着でっしゃろ」ヒジリが仲を取りもった。

「殺処分するんだったら、最初っから総出で来る事はなかったな~…俺一人で充分だった」ぼそっとジョーが言った。

「まぁ、そないにがっかりせんでもええやん。ソルジャー…また獲物は見つかるよって」

「あぁ、そうだな」

「ともかくあたしゃ、この子を連れて中に入るよ。雨に濡れて可哀そうだし…後は任せたわよ」

 ウズメが泣いている女の子をかばうようになだめながら言った。

「あぁ、そうしてくれ。ウズメねえさん…園児や職員たちも、もう中に入れてやってくれ」ツクモは言った。

「あいよ」ウズメはそう答えると、女の子を抱きかかえながら、裏口の玄関の中に入って行った。

「そういやぁ、俺たちもずぶ濡れだな…ひとまず玄関先まで引き上げようや」

 そう言ってツクモは、死んだビーストに奪われた拳銃を回収しているジョーとヒジリを促した。

 容赦なく降り続く雨季の雨が、人間として生まれながら、獣になって死んだ男の亡骸を濡らしていた。


 玄関の中に入って雨に濡れた上着を脱ぐと、ツクモはガンベルトのホルダーからサテラフォンを取り出した。

「あいつに連絡しといてやらなきゃぁな」

 そう言ってツクモは、手にしたサテラフォンのスイッチを入れて電話番号を入力した。

 たちまち彼の目の前に、スーツを着た30代半ばくらい男のフォログラムが浮かびあがった。

 どうやら、ツクモが刑事時代に所属していた警視庁の後輩のようだった。


(* レベルスリー=犯罪者は、1~5までにランク分けされる。人命に危険を及ぼす犯罪者は殺処分の対象となる。

今回のビーストは、イェーガーの説得に応じずに銃を発砲して抵抗した為、レベルスリーとなって殺処分された。

万引、窃盗、盗撮、痴漢などのレベルの低い犯罪者は、身柄を拘束されて「ブタ小屋(刑務所)」に入れられる。

なお、16歳未満の未成年にはビースト法は適用されず、外国人はビースト法で言う「市民」ではなく差別される)


~続く~

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る