第62話 サブテキスト

 やあ、おいらです。

 眠れないんです。前だったら『眠れない夜はミステリーを語ろう』をやっていたんですが、作者のストックが尽きちゃった。てへへ。書こうと思えば、有栖川有栖とか北村薫とか志水辰夫なんか書けるんですけど、絶対的な読書量が少なかったり、風間一輝みたいに文庫一冊しか残ってない、もったいない作者があったりして、書けないや。ちなみに風間さんの『男たちは北へ』は最高です。でも今、残っているかな? ハヤカワ文庫さんの器量がこれで分かりますね。


 それはそれとして、僕のギャグの原点は、何度も言いますが小林信彦氏の著作です。小林氏は、潰れかけていた宝石社を引き取って、実質的オーナーになった江戸川乱歩に見出されて『ヒッチコックマガジン』の編集長になった人です。日本のサブカルチャーの第一人者と呼ばれるのはそのためです。のちにクーデターを起こされて宝石社を追放されて、著作の道へと進みます。最初は純文学を志ざしますが、うまくいきませんでした。それはテレビによく出演していたので、タレント作家とみなされたからです。そんな彼が出版したのが『日本の喜劇人』芸人の評伝で、笑いのバイブルとされています。新潮文庫です。今は絶版かなあ?

 その笑いを具現化したのが『オヨヨ大統領シリーズ』です。最初はジュブナイルでしたが四冊目からミステリーやサスペンスを含んだ大人のユーモア小説となります。その後も『唐獅子株式会社』『紳士同盟』『中年探偵団』『ドジリーヌ姫の優雅な冒険』など、ユーモアとギャグに満ちた小説を書く一方、映画論、TV論を多数書いていきます。のちに、純文学に戻っていきますが、エンターテインメントにあふれた小説になっています。中学から大学にかけておいらは、氏の小説に耽溺しました。おいらの小説がギャグだらけなのはそのせいです。それらは全部、絶版です。ただし『紳士同盟』と続編の『紳士同盟ふたたび』は扶桑社文庫から復刊しました。コンゲーム、詐欺の小説です。もちろん、ユーモアたっぷりです。ぜひ、ご一読を。


 野球を題材にしたものは、赤瀬川隼の『球は転々宇宙間』です。これは、日本プロ野球を十八球団制にするという大胆な発想で書かれたものです。ここでは地域一体型の球団が作られ、今のJリーグや、プロ野球のパシフィックリーグに通じるものがあります。これも、絶版です。おいらは結婚のどさくさで(離婚したけどさ)、親に古本屋へ売られました。おいらが老父母と疎遠になったのはこれのせいです。他にも講談社の大衆文学館など、今は手に入らないものを売られました。ひどい親です。あと海老沢泰久さんの『監督』という、ヤクルト時代の広岡達朗さんをモデルにした野球小説もあります。たぶん、絶版でしょう。


 それから『和尚さん』の語り口は小路幸也さんの『東京バンドワゴン』シリーズから借用しました。このシリーズは生きていますから、書店でお確かめください。ただし、語るのは作者じゃなくて○○の○○ちゃんですけどね。


 日本の出版社は商業主義に走りすぎてすぐに絶版や重版未定にしてしまいます。前出の風間さんの本はたくさんあるのに、十年前で残っていたのは『男たちは北へ』だけです。でも近年、軽く復刊ブームがきて、竹本健治さんの四大奇書の一つ『匣の中の失落』をやっと手に入れられたり、あの復刻不能と呼ばれた泡坂妻夫さんの『生者と死者』ロバート・クーヴァーの『ユニバーサル野球協会』を獲得できました。やったね。

 とは言っても、おいら貧乏だから、本ばっかり買ってはいられないんだ。だから、小説家になって安定したいんだ。だから応援よろしくお願いします。と結局、コンテストに話を持っていく、おいら。せこいなあ。無理に決まっているのに。早く、仕事見つけなきゃ。

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