儚巣

鹿野プフ

長い旅の始まり

暗い闇の中にいる。

闇の中だと時間感覚がない。

意識があったかどうかすらわからない。


僕はいつからここにいるんだろう…。

少なくとも僕が人間であり、高校生であったことはついこの間のことのように思える。


夢…?違う。こんなに意識がはっきりした明晰夢なら僕は僕自身を閉じ込めたりなんてしない。


植物状態…?否定はできない。でも植物状態なら周りの音が聞こえるし、目も見えるらしい。

なにより僕が植物状態になるような事故にあったことなんて覚えてないし、

これはそんな人間的な現象ではない気がする。


なら…死んだ…のか?

死んだことなんてもちろん覚えてないが、

真っ暗な無重力の空間を漂っているこの現状を説明するにはこういう超常現象で片付けるのが1番かもしれない。


不思議と悲しくはなかった。

未練がないと言ったら嘘になるけど、

僕の人生には目標がないから。

なんのために生きているのかわからないから。

生きるという行為にしがみつこうとは思わなかった。


こんな生きているのか死んでいるのかわからない状態では、

僕の人生を整理することしかできなかった。

もしかしたらそのために与えられた時間なのかもしれない。

人の生死を管理してる誰かがいるならば、

なかなか乙なことをする。


返事をするように遠くに光の点が現れた。

それはどんどん大きくなりながら近付いてきた。


避けられたかはわからない。

でもこんな暗闇が続くならと、

僕はその光に飲み込まれるのを待つことにした。

辞世の句を読むのはまた今度にしよう。

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