第10話『それぞれの想い』

 あれから1ヶ月が過ぎた。

 訪れた盛夏の候。

 教室の窓から見える青い空には、入道雲が浮かんでいる。


 その雲は、時折激しい雨と雷を伴って僕たちに襲い掛かるものだけど……

 どうやら、今のところそんな気はないらしい。

 白く大きな姿で、空にのんびりと浮かんでいる。


「明日から夏休みになるわけだけど~」


 教壇では、ヒナコ先生が夏休みの注意事項を述べている。


「夏休み……か」


 僕は、小さくつぶやいた。




 ホームルームが終わり、生徒は教室から出ていく。

 帰宅する者、部活に向かう者、まだ校舎内に残る者と、様々な姿が見られる。


 その誰もが、明日からの休みに胸を踊らせているのだろうか……


「ガクーッ!」


 不意に僕を呼ぶ声。

 振り返ると、レイジが小躍りするようにやって来た。


「夏休みだ、夏休み! 明日から、海に山に遊びまくるぜ!」

「わかりやすいのが来た……」

「……ん? 何か言ったか?」

「いや、独り言~」


 そう言って、僕はおどけるように笑った。


「明日からの予定、マキと決めなくっちゃだぜ!」

「……あんたは、ちょっと落ち着きなさいよ」


 1人はしゃぐレイジを、後から来たマキがたしなめる。


「マキ!」


 レイジが嬉しそうに振り返った。


「明日、さっそく海行かないか?」

「あ~……明日はダメよ」


 だけど、マキは首を横に振る。


「明日は……っていうか、明日から家の仕事を手伝わなきゃ」

「え~っ、マジで!?」


 マキの家は米屋を営んでいる。

 ひいおじいちゃんの代から始めた店は、今年で創業100周年を迎えた。


「マキの家の米は、美味しいよね」

「昔ながらの作り方してる農家さんと、契約してるからね」


 僕の言葉にマキは胸を張る。


「……でね、そのお米使って、おにぎりとかお弁当も出そうって話になってるの」

「おーっ!」

「それが、明日からなのよ」

「そうなんだ。それは、しばらく忙しそうだね」


 マキはうなずいた。


「だから、あたしも手伝うことになってるのよ」

「そうなのか……」


 ガックリと、うなだれるレイジ。


「確か、ガクもこの前、バイトの面接に行ってたよな……?」

「うん。今日、返事が来る予定だよ」


 長い夏休み。

 あまり活動的に遊ぶタイプじゃない僕は、毎年暇を持て余している。

 だったら、今年は思い切ってバイトでもしてみようかと、コンビニの面接に行ってきたのだ。


 それに……

 忙しい毎日の方が、あの夏の大会のことを思い出さなくて済む。


「ガクも、少しは積極性が出たみたいね」


 マキの笑顔に、僕は頬をかいた。


「あ~あ、みんな予定いっぱいかよ!」


 レイジは、天に向かって伸びながら吠える。


「あんたも、バイトすればいいのに」

「バカモノ! 俺は、夏を遊び尽くすんだぜ!」

「それ……威張ることじゃないよね……」


 胸を張るレイジに、僕とマキから深いため息が漏れた。


「ところで、ガク」

「ん?」

「お前、バイトはいいけど……ミサキと遊んだりしないのか?」

「……なっ!?」


 いきなりなレイジの言葉に、慌てて辺りを見回す。

 でも、教室内にはミサキの姿は見当たらない。


「ミサキなら、職員室に行ってるわよ」

「そ、そっか……」


 僕は、ホッと胸を撫で下ろした。


「なんだよ~、別に聞かれたっていいじゃん」

「……レイジは気にしないかもしれないけど、俺は気にするの!」


 レイジをにらむ。


「まったく……その様子だと、そんな約束なさそうだな」


 今度は、レイジがため息をつく。


「あの子も忙しいみたいだけど……」


 視線を巡らせるマキ。


「でも、お願いすれば1日くらい空けてくれるかも」


 その視線は、ミサキの席に向けられている。

 当然ながら、そこに本人の姿はない。


「お、お願いって……」

「あ~、煮え切らないヤツめ!!」


 レイジは、無造作に頭をかく。


「……よし!

 じゃあ、今から4人で遊びに行こうぜ!」

「えっ!?」

「ガクもマキも明日からバイトだし、ミサキも忙しくなるんじゃ、今日しかないだろ!」

「それ、いい考えね!」


 マキが即座に同意する。


「あたし、カラオケ行きたーい!」

「よ~し、じゃ、駅前のカラオケに行こうぜ」


 にわかに盛り上がる2人。


「ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待って、2人とも!」


 僕の意志を無視して進む話に、なんとか歯止めをかけた。


 ミサキはマキと仲が良い。

 そのため、自然と僕たちは4人でいることも多くはなった。


 ただ……

 それは“いる”というだけで、これといって何かあるワケではない。


 1ヶ月前にかけられた声なき声、『がんばって』。

 最近では、

 あれは僕の夢とか、勘違いだったんじゃないか……

 とさえ思えていた。


 でも、僕はそれでも良かったんだ。

 ミサキが、僕と同じ空間にいる。

 そして、ときどき笑いかけてくれる。

 それだけで満足だったんだ……


「どうした、ガク?」


 レイジが、不思議そうに僕を見る。


「あ、あの……」


 僕は、恐る恐る口を開いた。


「突然そんなこと言われても……その……心の準備が……」


 しばしの沈黙……


 ――の後に、


「「乙女か!」」


 2人は、同時に僕をにらんだ。


「お前、まだそんなこと言うのかよ」

「だ、だって……」

「いいかガク」


 レイジが、僕の肩に腕を回してきた。


「よりいっそう、仲良くなるチャンスなんだぜ?」

「う、うん、それは……わかるけど……」

「ガク、あなた深く考え過ぎなのよ」


 マキが笑う。


「うちら、何も告白しろって言ってるんじゃないんだから」

「う、うん……」

「うちらに任せておいてよ。悪いようにはしないからさ」


 そのとき、不意に教室の扉が開き、ミサキが姿を現した。


「お! 噂をすればだな」


 レイジとマキは、顔を見合わせてうなずく。


「ねー、ミサキー!」


 ミサキの元に走り寄るマキ。

 僕たちも、その後に続いた。


「わぁ、マキちゃん! みんなも」


 僕たちを見るミサキの顔は、嬉しそうに輝いた。


「あのね、うちらこれからカラオケ行くんだ」

「わぁ、カラオケかぁ! いいなぁ」

「ミサキも一緒に行こ? まだこの4人で行ったことないしさ」

「あ……うん……行きたいけど……」


 不意に、その顔が曇った。


「私……これから病院なの」

「病院?」

「うん……お母さんも、学校の近くで待ってるから」

「そうなんだ……」

「うん……だからごめんね」

「ううん、大丈夫よ」

「また、今度誘ってね」


 そう言うと、ミサキは頭を下げた。

 そして、机の上の鞄をつかむと、少しうなだれたように歩き出す。


 教室から出るとき、一度こちらを振り返ったミサキは、胸元で小さく手を振った。

 僕たちも、慌てて手を振り返す。

 そして、ミサキは僕たちの視界から見えなくなった。


「行っちゃったね……」


 ミサキが出て行った扉を見つめながら、僕はつぶやく。


「ミサキ、病院って言ってたけど……何かの病気なのか?」


 レイジがマキに訪ねる。


「体育は、いつも見学だったよな?」

「だね……マキは、何か聞いてる?」


 しかし、マキは寂しげに首を振った。


「何か、重いもの抱えてる気はするんだけど……」

「そっか。じゃ、今度、それとなく聞いてみようぜ」

「でも……そういうのって他人がむやみに踏み込んじゃいけない気がして……」


 うつむくマキ。


「大丈夫だよ!」


 僕は言う。


「だって、2人は親友じゃん!」

「ガク……」

「それに俺たちもいるぜ?

 困ったときは、いつだって力になるぜ!」

「レイジ……」


 マキは、もう一度うつむいた。

 そして、


「ありがとう……」


 そう言って上げた顔には、いつもの笑みが戻っていた。


「よ~し!」


 レイジも笑顔になり、マキの頭を無造作になでる。

 その行動に少し驚きを見せるマキだったが、それは次第に喜びの表情に変わっていった。


 2人は、昔よりもずっと深い絆で繋がっているんだな……


 僕は、そっと目を細めた。


「よし! それじゃ、うちら3人で行くか!」


 明るい声を出すレイジ。

 でも、僕は首を横に振った。


「俺はいいよ。2人の邪魔しちゃ悪いしさ」

「バカねぇ、そんなこと気にしないでよ」


 マキは笑う。


「昔から、ずっとうちらは一緒だったじゃない」

「そうだぜ、ガク。別に邪魔なんかじゃないぜ?」


 レイジも、それに続く。


「むしろ、誰かいた方が俺は燃え……」

「あんたは黙ってて!!」


 マキは、レイジの足を力いっぱい踏み付けた。


「おごぅ!!」


 床を転がるレイジ。


「ね、行こうよ?」

「う~ん……」


 転がるレイジを後目に、僕は頬をかいた。


「誰か、もう1人いれば……」


 そのとき、鞄に参考書を仕舞うハカセと目が合った。

 ハカセは、ジッと僕のことを見つめてくる。


 な、なんだこの視線!?


「あ、あの、ハカセ……」

「なにかね?」

「や……一緒に……カラオケ行く?」


 思わず尋ねる僕。

 ハカセは、深いため息をついた。


「僕が、行くと思うのか?」

「……思わない」

「よろしい」


 そう言うと、鞄を持って歩き出す。

 教室から出るとき、ハカセはもう一度こちらに目を向けてきた。

 しばしの間、僕たちを見つめた後……

 無言で教室から出て行くのだった。


「あいつ……何がしたかったんだ……?」

「さ、さあ……?」


 首をひねるレイジと僕。

 精神的な疲労感が襲ってくる。


「……本当は、一緒に行きたかったのかも」

「「まさか!」」


 マキのその言葉に、僕たちは驚きの声をあげた。

 出口を見る。

 そこにはもう、ハカセの姿はない。


「まさか……ね」


 僕は、そっとつぶやいた。




 その後、僕たちは、結局3人でカラオケに行った。

 3人で騒ぐのは、本当に久しぶり。

 僕たちは、昔を思い出しながら思いっ切り楽しんだ。




 カラオケは3時間ほどで終わりを迎え、僕たちは帰路についた。


「ふぅ……たまにはカラオケもいいな」


 すっきりした気分で、僕は家の門を開く。

 僕の家は、小さいながらも庭付き一戸建てで2階もある。

 親は、こんな小さな家でも建てるのに苦労したと言っていたのを覚えている。


 歩きながら、玄関脇のポストに目を向けた。

 そこには広告のチラシと、何通かの手紙や封筒がある。


「バイトの採用通知もあるかな?」


 でも、それは電話で来ると言っていたことを思い出し、僕はそれらを無造作につかみ上げた。


「ただいま~」


 玄関を開けると、母さんが花瓶に花を生けているところだった。


「あら、お帰り。遅かったのね」


 母さんは、僕の顔を見ると手を休めて迎えてくれた。


「うん、レイジたちとカラオケ行ってたから」


 そう答えながら、先程の手紙と封筒を渡す。


「また、花やってるの?」

「そうよ。綺麗でしょ?」

「うん」


 母さんは昔から花が好きで、よく玄関に花瓶を置いて花を生けている。

 なんでも、花の心を表現しているらしい。

 そんなこと僕にはわからないけど、玄関を開けたときに花があるのはいいことだと思う。

 色鮮やかな花々と香りに包まれると、一日の疲れも取れる気がする。


 プルルルル……

 プルルルル……


 不意に鳴り響く音。


「母さん、電話だよ」

「はいはい」


 母さんは手にした花を置くと、小走りで部屋の中に消えて行った。


「忙しそうだな」


 後で、何か手伝いしてあげようかな。


 そんなことを思いながら靴を脱ぎ、玄関からすぐのところにある階段を上った。

 2階は、妹の部屋もある。

 手前が妹、奥が僕の部屋だ。


「……ん?」


 ふと見ると、妹の部屋の扉が開いている。


「だらしないなぁ……」


 そんなことを思いながら、妹の部屋の前を通り過ぎようとしたとき、


「あ、お兄ちゃん、お帰り!」


 元気な声が聞こえてきた。


「ただいま、エリカ」


 視線を向けると、そこには僕の妹、梨川 えりかがいた。


「遅かったね~」


 エリカは、左右に縛った髪を揺らしながら言う。


「うん、レイジたちとカラオケ行ってたからね」

「わぁ、レイジさん! マキさんも一緒?」

「一緒だよ」

「いいなぁ……エリカも一緒に行きたかったな~」


 昔からエリカは、レイジとマキがうちに来たとき、2人によく遊んでもらっていた。

 そのせいか、あの2人は、すっかり憧れのお兄さん、お姉さんという存在になっている。


 実の兄には、憧れなんて言葉、無縁のくせにさ……


 僕は、ため息をついた。


「ん~? お兄ちゃん、どうしたの?」

「別に、何でもない……」


 少し悲しそうに言う僕に、エリカは首をひねっている。


「あ、そうだ、お兄ちゃん!」


 不意に、エリカは手を叩く。


「お兄ちゃんに伝えること、あったんだ」

「伝えること?」


 僕は聞き返しながら、開け放たれたままの妹の部屋に入った。

 ピンクの色調のカーテンと、ベッドの上の布団。

 部屋のいたるところに置かれた、数々のぬいぐるみ。


「相変わらずの部屋だなぁ……」


 あまりにファンシーなこの部屋。

 この中にいて、よく落ち着いていられるなと思う。


「む~、だって、可愛いのが好きなんだもん」

「可愛いって言っても、エリカも、もう中2なんだからさ~」


 そう言いながら、僕は近くにあった大きなクマのぬいぐるみの頭を叩いた。


「も~、ペムを叩かないでよ!」


 エリカは駆け寄ると、それを僕から守るように強く抱きしめた。

 クマのペム。

 エリカのお気に入りのぬいぐるみの1つだ。


「お兄ちゃんは、他の子の部屋を見たことないから、そうやって言うんだよー!」


 エリカは唇を尖らせる。


「友達の部屋だって、こんな感じだったもん」

「え……そうなの?」

「そうだよー! お兄ちゃんも、早く彼女作って、部屋を見せてもらいなよ!」


 ぐっ……!

 家でも、この話題になるのか……


「もう、お兄ちゃんだって高2なんだし~」


 先程のお返しとばかりに、いたずらな笑みを浮かべるエリカ。


「彼女の1人や2人、作って来なさいよー」

「いや……2人いたら、問題だと思うぞ……」


 僕は、頬をかいた。


「……それで、伝えることって何だったんだ?」


 このままでは、話が際限なく脱線していきそうなので、この辺で軌道を修正する。


「あ~、そうそう!」


 エリカは、再び手を叩いた。


「あのね!」

「うん」

「えっとね……」

「うん」

「……忘れちゃった」


 屈託のない笑顔を見せるエリカ。


「お前な……」


 僕は、深いため息をついた。


「ま~、そのうち思い出すでしょー」

「そんなんでいいのか……」


 そのとき――


「学司ーっ、ちょっとー!」


 1階で、母さんが呼ぶ声が聞こえた。


「ほら、お兄ちゃん! お母さん呼んでるよ!」

「ったく……ちゃんと思い出しとけよー」


 そう言いながら、僕は妹の部屋を後にし、階段を下りた。


「なに? 母さん」


 母さんの手には先程の封筒と、その中に入っていたであろう、パンフレットが握られていた。


「学司、これを見てごらんなさい」


 母さんは、僕にパンフレットを手渡す。


「恋愛教習……合宿所……」


 そこに大きく書かれた文字を、声にする僕。


「最短20日で免許が取れる……これは?」

「パンフレット以外の何に見えて?」

「そうじゃなくて!」


 僕は、頭を振った。


「あなたも高校2年生なんだし、そろそろ免許を取っておいてもいいと思って」


 母さんは、笑顔で言う。


「いつかは取らなくちゃいけないものだし……

 もう、レイジ君やマキちゃんも持ってるって言うじゃない?」

「それは……」

「それに、ここなら合宿だから、最短で20日間。夏休みの間に取れるわよ」

「う、うん……

 でも、どうしたの? 急に恋免だなんて」


 喜々として言う母に、僕は首を傾げた。


「さっき、電話があったでしょ? あれね、田舎のお兄さん……学司の伯父さんからだったの」

「伯父さんが?」


 母さんは、うなずいた。


「伯父さんが、恋愛免許の教習所をやってるのは知ってるでしょ?」

「うん……あ、このパンフ、もしかして伯父さんとこの?」

「そうなの」


 伯父さんは、恋愛免許教習所を経営している。

 田舎ということもあり、その敷地は広い。

 以前遊びに行ったときは、敷地内に合宿所もあったのを覚えている。


「それでね、今回、合宿の参加者に1人キャンセルが出たんだって」

「……ふーん?」

「キャンセル料はもらってるし、せっかくだから格安で来ないか? って言ってくれたのよ」

「えーっ! そ、それ、いつから?」

「明日から。どうせあなた、夏休みは暇なんでしょ?」

「ひ、暇じゃないよ!」


 僕は、慌てて否定する。


「明日から、バイトすることになってるんだから!」

「あら、そうなの? ……困ったわねぇ」


 母さんは、頬に手を当てた。


「とってもいいお話なのに……」

「うん……悪いけど、伯父さんには断っといてよ。バイトは休めないしさ」


 正直、バイトはどうでも良かった。

 ただ、自分に自信が持てない僕は、どうしても恋愛に臆病になってしまう。

 だから、恋免に対しても、どうしても1歩引いた形になってしまう。

 レイジたちに薦められても気乗りしなかった理由は、それだったのだ。


「残念だけど……仕方ないわね……」


 残念そうな母さんの声に、胸がチクリと痛む。


 いつか僕が、ほんのちょっとでも自分に自信が持てたとき……

 そのときは、必ず受けるから。

 だから、母さん。

 今回はごめんね……


「じゃあ、伯父さんに断りの電話しておくわね」


 母さんが電話に手をかけた


 そのとき――


「お兄ちゃーん!」


 不意に、エリカが階段の上から叫ぶ。


「さっき言いたかったこと、思い出したよー!」


 そう言いながら、勢い良く階段を駆け下りてきた。


「あのね、お兄ちゃん宛てに電話が来てたの」

「電話? なんの?」


 僕は首を傾げる。


「あのね……」

「うん」

「今回のバイトは……不採用とさせて頂きます! だって!」

「……え゛!?」

「お兄ちゃん、バイトできなかったねぇ」


 不意に、


 ぽん!


 と、肩に母さんの手が置かれた。


「決まりね!」


 そう言う母さんの声は、とても嬉しそうだった……

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