拒絶彼女の拒否反応:-Next World-
「えー、なにこのブログ…」
遠く離れたどこかの高校の教室で一人の茶髪のショートカットの女の子が、昼食のあんぱんを片手に自分のスマートフォンを見ながらそう言った。
机を挟んだ向かい側には、小さな空になったお弁当箱を自分のファスナーの開いた通学かばんに、適当に放り投げている黒髪のポニーテールの女の子が座っていた。
黒髪のポニーテールの女の子は、通学かばんのファスナーを締めたあとに机においてあるメロンパンを開封しつつ、
「この間の殺人事件の容疑者の男子高校生のブログらしいよ。ネット上で今話題なんだってさ。ちなみにこれを書いた犯人は自殺したよ。この記事の投稿時間の、数時間後に警察がこの部屋に入ったけど、もうこの男子高校生は、首を吊って死んでいたんだって」
ショートカットの女の子に丁寧に説明した。
それに、
「へー怖いこともあるものだねぇー」
ショートカットの女の子が言った。
そして、さらに言葉を重ねる。
「っていうか、この男子高校生、ただのストーカーじゃん。好きな人に振られたから殺すなんてただの狂人じゃん。この一年間のストーカー行為も、この人が、ただ自分が勝手にやっただけじゃん。自覚ないのかなー」
批判だった。そしてぼそっと付け足す、
「…ていうか私なら絶対、好きな人の連絡IDごときでご飯奢らないよ」
それを聞いたポニーテールの女の子が、右手のメロンパンをかるく振りながら告げる。
「恋は盲目っていう言葉があるでしょ。きっと、自分が狂っているなんて、誰にもわかりはしないんだよ。きっと、本当の意味で周りを見えてる人間なんてどこにもいないんだよ。例えばほら、今みっちゃんのパンを私が、食べてるのだけれど、スマートフォンに夢中で、見えてなかったでしょ?」
みっちゃんと呼ばれたショートカットの女の子は驚いた顔で、
「えー…なるほど、確かにそうだね。って違う返せ! まいこ! それ私のメロンパンだよ!」
と、自分が食べていたあんぱんを机に置き、自身がまいこと呼んだ、ポニーテールの女の子の、メロンパンを持っているほう、つまりは右腕を掴んだ。
「あ、そういえば」
右腕を掴まれながらまいこは言い、そして続ける。
「私みっちゃんが好きな男の子の連絡ID知っているんだよね。面白そうだから隠していたれど、実は私、あの男の子と幼なじみなんだ」
目を細め、誘惑の言葉と共に、少し笑みを浮かべた。
そんな誘惑の言葉を聞いたみっちゃんは、
「え! え! え! なんで隠してたの!? 知ってるなら教えて教えて!」
掴んだ手を揺らし、催促をする。
「まてまて、落ちる落ちる。待ってみっちゃん、ほら、メロンパン落ちるよ」
みっちゃんの手が止まる。
「ここで一つ取引き。今日の放課後に駅前のコンビニで肉まんを奢ってくれたら教えてあげるよ。どう?」
すると、まいこを掴んでいた手がほどかれる。
「え? ほんと!? そんだけでいいの? 全然おごるおごる!」
と、みっちゃんはかなりのハイテンションで言った。
続けてまいこが、淡々と言った。
「ありがとう、それじゃ、取引成立」
次にみっちゃんが結構冷静に言った、
「それはそうと、そのメロンパン早く返してよ!」
言われたまいこは、前方の、一瞬教室の黒板の上の時計をちらりと見た。
そして、おもむろにポケットから水色のスマートフォンを取り出し、スマートフォンの暗い画面を見ながら、
「ああー!! もうあと一分で、お昼休み終わっちゃうよ! はい、メロンパン!早く食べないとやばいよ!」
と白々しさを交えながら、妙に演技っぽく言いながら、みっちゃんにメロンパンを差し出した。
みっちゃんは、差し出されたメロンパンには目もくれず、自分のスマートフォンの画面にうつる時計を一瞥。
そして、あわてた様子であんぱんを手に取り、言う
「ああああ! もうこんな時間? 早く食べなきゃ! 私あんぱんを食べるから、まいこはそのメロンパンを頼んだよ!」
あんぱんを急いで食べるみっちゃんを横目に、まいこは、すこしニヤっと笑い、小さくガッツポーズ。
そうしてから、まいこは嬉しそうに言った。
「任せろー!!」
まいこが大きな口を開けて、メロンパンにかぶりつくのと同時に、教室の壁に設置されたスピーカーが昼休みの終わりを告げた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます