第3話不幸な男3
「ふぅ~、もうこれで全部倒したかな?」
額の汗を拭きとりエクスは周囲を確認した。
「それにしても今日はヴィランによく会うね」
「ほんとにね~ついてないよね~」
ヴィランとの戦闘を終え、5人は洞窟の奥に戻る。
「すまないな・・」
洞窟の壁にもたれかかるようにして座っていた男が突然呟いた。
「どういうことですか?」
エクスには謝った意味が分からず、聞き返した。
「そのヴィランとやらはオレのせいで寄ってきているのかもしれん。」
「えっ?」
男は視線をエクスたちから逸らし、申し訳なさそうに話を続けた。
「実はな・・オレは不幸を呼ぶ体質なんだ・・」
「・・・・・」
しばしの沈黙が流れた。
「なにを言っているんですか?この人は。」
シェインの冷たい視線が男に向く。
「ほんとなんだ・・信じてもらえないかもしれないが・・・」
「なに言ってんだこいつは。まさかふざけてんじゃないだろうな!」
タオが男に近づこうとするのをなんとかエクスがなだめる。
「まあまあ落ち着いて。」
「でも確かにそういううわさは聞いたことあるような気がするよ~。」
ファムが人差し指を顎に当てて頭の中に埋もれていた記憶を掘り出す。
「それに栗が頭に落ちてきて水たまりにこけるなんて普通じゃないしね~」
「たしかにそう言われれば納得ですね。」
「やはり迷惑をかけてしまったな・・。世話になったな。」
男は立ち上がり洞窟から去ろうとするがまたもやレイナに止められた。
「ヴィランとの戦いなんてこっちは慣れているわ。そんなことで迷惑だなんて誰も思わないわよ。そうよね?」
「ああ、もちろんだよ。」
レイナの問いにエクスが答える。
それに続きみんなもうなずいた。
「私がちゃんと傷を治してあげる。だから、あなたは安静にしていて。」
「ありがとな・・・こんなに優しい人たちに会うのは初めてだ。」
「困った時はお互い様よ。」
「ああ。」
そして、数日が過ぎ男は順調に回復していった。しかし・・・
「もぉーいや!!なんなのあの男は!!看病してたら洞窟の天井から石が落ちてくるし、たき火の火が急に襲ってきて服に燃え移るし、あの男の近くに行くたびに転んであの男にぶつかるし。もう看病なんていやっ!!」
「す、すまない・・・」
「レイナ落ち着いて。」
「落ち着いてなんかいられないわ!!なんで私だけが巻き込まれるの!?なんで!?なんで!?」
エクスがなだめようとするが全く落ち着く気配は無い。
「ほんとにすまない・・・」
消え入るような声で男はレイナが文句を言うたびに謝った。
「あなたは悪くないですよ・・わざとやってるわけじゃないし。」
余りにも男が不憫だったのでエクスはフォローを入れる。
「もぉ誰か看病代わってよ!!」
レイナがエクスたちのほうを睨むように見る。
「えっと・・・」
エクスが返答に困っているとシェインが反論した。
「姉御、途中で投げ出すのは良くないと思いますよ。」
「うっ・・」
そして、タオも続く。
「元はと言えば、お嬢が看病するって言いだしたんじゃなかったっけか?」
「そう、だけど・・」
「あーーーもう!!みんなどうして私を見捨てるの!?」
そんな言い合いをしているといつものようにまたヴィランが洞窟の中にやってきた。
「またヴィラン?ちょうどいいわね、ボコボコにしてあげるわ!」
「レイナ・・お姫様がそんな言葉使っちゃダメだよ・・」
しかし、エクスの言葉はレイナの耳には届いていないようだった。
「最近ヴィランが姉御の鬱憤を晴らすサンドバッグになってますね。」
「クルルルゥゥ・・・」
「はは・・」
エクスにはヴィランが少し怖がっているように見えた。
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