第20話 ひな祭り
ユキに抱かれて桜の木の下。
ユキは桜の根本に水を注いでいます。
まだ少し肌寒い朝…。
チョビさんもクロさんもユキの足元でウロウロ、スリスリしています。
「お姉さんと一緒に遊んでなさい…」
チョビさんとクロさんの頭を撫でるユキ。
「お姉さん…」
チョビさんも、クロさんも、ぼんやりとしか覚えてませんが…実は2匹がユキの家に来る前に黒ネコの姉さんも住んでいたのです。
黒ネコ姉さんは2匹がまだ、ユキの手の平に乗るくらい小さい頃に一緒に暮らしていました。
チョビさんは黒ネコ姉さんの後をトコトコと付いて回り、クロさんはさらにその後をトコトコ付いて歩いていたのです。
黒ネコ姉さんは、普段は面倒くさそうに尻尾で2匹を、あしらう様に…あるいはじゃらす様に、暮らしていました。
それでも、2匹の姿が見えなくなるとウロウロと探したり…眠るときは2匹を包むように眠るのです。
時折、うっとうしくなると、ヒョイッと高い所に飛び乗って、そそくさと行ってしまいますが…。
黒ネコ姉さんは早起きで、毎朝、目が覚めるとユキの顔を舐めて、御飯をねだります。
なぜか洗面器のお湯が大好きで、ユキがお風呂に入るとトトトッと先に浴室に入って行くのです。
そして、シャワーで洗面器にお湯を注いでもらってピチャピチャと飲みながら、浴槽の隅でユキを待つのです。
でも…黒ネコ姉さんは…ある朝ユキを起こしに来ませんでした…。
ユキは裏の桜の木の根元に黒ネコ姉さんを寝かせたのでした。
ユキが2匹を桜の木の下で遊ばせるのは、黒ネコ姉さんも一緒に遊んでいるような気持ちになるから…。
たまには2匹にも黒ネコ姉さんを思い出してほしいから…。
「覚えてるかい?」
ユキが優しく2匹を撫でます。
ゴロゴロと喉を鳴らして「ニャー」と応えるチョビさんとクロさん。
そしてユキは桜の木の下でニコリと笑うのでした。
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