第16「神様の帰る場所」

ひかり「う……うぅん……、まぶしい」


あ、朝だ。私は眼をあけて、窓を見る。

いつもと同じ、窓は朝日を室内に差し込ませている。


ひかり「……あれ?」


私の横ですやすやと寝息が聞こえた。

ふと、下をみると、私のひざの上でアレックスが眠っていた。


ひかり「アレックス……、アレックス、朝だよ」

アレックス「……ひかりか?」

ひかり「そうだよ」

アレックス「よかった……、いきてるんだな」

ひかり「アレックスこそ、無事でよかった」


私は重要な事実に気がついた。


ひかり「あ、あれ? 翼がない」

アレックス「あぁ、あれは、また地中深くに眠ることになったよ」

ひかり「そうなんだ」

アレックス「……、ひかりはいつまで、この世界にいる?」

ひかり「そんなのわかんないよ」

ひかり「あ、そうだ! 戦争、どうなったの?」

アレックス「終わったよ。ペルティナ族の王は瓦礫の下敷きに……。機体から逃げ出すときに瓦礫の一部が崩れてきたんだと思う」

ひかり「それじゃあ、アレックスが今度は王様だね」

アレックス「そんな柄じゃないよ。ボクにはロイス様の従者って役目があるし」

ひかり「でも、ロイスから言われたんじゃない?『お前は自分の国を治めろ』って」

アレックス「……うん」

ひかり「今、ペルティナ族の人たちは困っているよ。アレックスが、もうこんなことが起きないように、国を治めてあげなよ」

ひかり「それが、ロイスに対する恩を返すことなんじゃない?」

アレックス「……ひかりがそう言うなら」

アレックス「ボクがペルティナ族の王になったら、お前はどこに行く?」

ひかり「ん~、帰れるまで、ここに厄介になると思う」

アレックス「……お前さえ良かったら、ボクの……、いや、ペルティナ族の復興を手伝ってくれないか?」

ひかり「いいよ。一緒にいるって約束だもんね」

ひかり「……アレックス? 何か、顔、赤いよ?」

アレックス「その……、あれなんだ……、分かるだろ!!」

ひかり「?」

アレックス「この鈍感女め!! ペルティナ族の復興なんか、本当の目的なんかじゃないって気がつけ!!」

ひかり「じゃあ、なんで?」

アレックス「っ~、もう、このばか、ばか、ばかばかばか」

ひかり「意味わかんないよ」

アレックス「うるさい。黙れ!」


唇に暖かくて柔らかな感触がした。目の前に、アレックスの姿が見える。

まつげ長いなとか、ああ、キスされてるのか、とかどうでもよくなってしまいそうだ。


ひかり「!?」

アレックス「分かったか……、そういう意味で一緒にいてほしい」

ひかり「……」

アレックス「い、嫌なのか?」

ひかり「……い、いいよ」

アレックス「なんか、恥ずかしい奴だな」

ひかり「そっちこそ……」

ひかり「ねぇ、今日は、本当にいい天気だね……」


ああ、くらくらするくらい、とってもいい天気だ。

太陽の光がまぶしくて、くるくる回るみたいだ。


ひかり「……あれ?」

友人「ひかり、大丈夫? 良かったぁぁぁ!!」

ひかり「ここ……、何処?」

友人「中庭の芝生の上。今、救急車呼んだところだから、そのままで居て!!」

友人「動いちゃダメだよ。頭打ってるから!!」

ひかり「ここ、学校?」

友人「そうだよ、どうかした? 頭うって記憶飛んじゃった?」

ひかり「戻って……、来ちゃったんだ……」

友人「は? 何処から?」

ひかり「ううん、何でもないの」


その後、救急隊員が来て、私は最寄の病院へと連れて行かれた。

あの日々は夢だったんだろうか?

でも、夢ではない……、だって……。


母「あらやだ、ひかり、背中に六個も痣があるじゃない」

母「落ちた時についたのかしらね」


そのアザは確かに私にとって、なにか大切なもののような気がした。

一体、なんだったのだろう。

けれど、私には思い出せない。

なのに・・・。


母「ひかり・・・、どこか痛いの?」


自然と涙がこぼれた。

痛くない。何故か、胸を締め付けられるほど、切ないだけ。

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