なごり雪
赤松 帝
第一章 「君から届いたメール」
愛する彼女からメールが届く。
彼女とは、いまは遠く離れている。
“いつもふたりで散歩していた公園の紅葉が、真っ赤に染まって水面に映るあの美しい光景が忘れられないわ”
夜まで見とれている君の冷えきった手を握りしめ、僕のコートのポケットの中で温めたのを覚えているよ。
“まもなく霜が降りる頃かしら?寒くなるからマフラーを出しておいてね。チェストの3段目の奥にしまっておいたわ”
普段どおりのあたたかい気遣いをいつもどうもありがとう。
“お正月もやっぱりお仕事かしら?無理しない様に頑張ってね。どうか素敵な新しい年をむかえられますように”
君の想像した通り、暮れも仕事に打ち込むことにした。君のいない年の瀬はとても寂しいよ。
“そろそろ初雪が降ったかなぁ?また雪ダルマいっぱい作ってね?”
君のために100コも作りすぎて、近所の子供に雪が無くなったと怒られたっけ。
“もうすぐ寒い冬も終わりかしら。いよいよわたしからのメールはこれで終わりです。優しい彼女をみつけて新しい春を迎えてね。”
夏の終わりに亡くなった彼女からの最期のメッセージが届いた。
凍える様に過ごしたこの冬の寒さを、寂しがりやの僕が独りきりで乗り切れるかしらと、心配性で心優しい君は友人の誰かに事前にメールを用意しておいた携帯電話を託しておいてくれたんだね。
僕は泣いた。ただひたすらにわんわんと泣いた。
あたたかい春がきて、なお君が恋しい。
どうしていま君は僕のそばにいないのだろう・・・
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