好きな人に好きな人がいても好き。

第8話 貴女の居ない世界は無なの…

私の知らない所で

私の知らない誰かと

過ごしている貴女を

少しも知りたくない。

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“明日から1週間静岡で合宿

　だから暫く図書館には行けない。”

はるから届いたメッセージは

これだけだった。

冷たい。

“1週間会えないけど頑張るから”とか

“会えないの寂しいね”とか

“早く会いたいね”とか

とか、とか…

もっとなにか言葉が欲しかった

私ばっかり好きみたい

はるも好きって言ってくれたのに

……だめだ

重い女になってる

知り合いにバスケ部居たら応援とか

行けるのにな～

誰か居ないかな～

う～ん……居ない

暇だよ夏休み

はるが居なきゃ暇だよ

「会いたい！！！」

「五十嵐ちょっと良いか?」

「はい!」

「コーチに呼ばれるなんて何したの?」

「えっ? 悪い事はしてないよ?」

「無意識とか?」

「由依ちゃん可愛い顔で怖い事言わないで」

「五十嵐！」

「あっ、はい!」

「ほら怒られた」

「由依のせい!」

「すみません遅くなりました」

「ん。どうだ、練習きついか?」

「初日は体力的に少し。

でも2目以降はそんなに」

「練習終わりも自主練してるんだろ?」

「シュート練とランだけちょっと」

「その体力とやる気があれば大丈夫だ。月末から行われる地区選抜の練習参加してみるか?」

「えっ!? はい!」

「うん、じゃ詳しい事はまた話すから」

「はい、ありがとうございます」

「うん、頑張れ」

「はい!」

「怒られた?」

「地区選抜の練習参加するか、だって」

「えっ…凄いじゃん、参加するの?」

「もちろん。即答」

「部の練習は?」

「分かんない、詳しい事はあとから話すって」

「…そっか」

「由依?」

「ん?」

「部の練習にうち居ないの寂しい?」

「……」

「…」

「寂しいじゃない」

「え?」

「寂しいじゃない、居ないなんて嫌だ」

「…なんか照れます」

「うるさい!」

由依はいつも照れると口が悪くなる

ツンデレってやつなのかな？

たぶんこのツンデレもモテるポイント

「コーチなんだって？」

「地区選抜のこと」

「選ばれた⁉︎」

「うん、練習参加することにした」

「凄いじゃんはる！やったね！」

「ありがとう美侑」

「はるの努力が報われたね」

「自主練付き合ってくれた美侑のおかげだよ、本当にありがとう」

「どういたしまして〜」

「皆お祝いしようね！」

「良いね、やろっか」

美侑と由依で祝賀会を計画してるみたいで、うちは本当に素敵な友人も持ったなと思った。

皆、2人みたいな人だったら良いのに

外見だけで寄ってくる人は、

どうしても苦手

あぁ、麻衣に会いたい

ふとそんな事を思った。

練習終わりに連絡してみよう

“地区選抜に選ばれた

月末から選抜チームの練習にも参加する事になったよ

選抜は目標の１つだったから嬉しい”

夜にはるから着たメッセージ

じゃ、もっと会えなくなるじゃん…

“おめでとうはる！

やっぱりはるはバスケ上手だね

またはるがバスケしてる姿観たい…”

観たいじゃなくて本当は、

会いたいなんだけどな〜

“ありがとう

選抜メンバーは皆うちより上手いから

沢山練習しなきゃ…

試合観に来て欲しい

麻衣が応援してくれたら

どんな相手にも負ける気しないよ？”

“無理し過ぎないでね！

そうだよ！

私が応援するからはるは絶対勝つよ

試合いつあるの？”

“うん、ありがとう気を付ける

来月中旬に試合あるから

近くなったらまた連絡する。

こんなやり取りしてると

会いたくなるね…”

あっ…

はるも会いたいって思ってくれた。

胸がキュッとなる

会いたい

私もはるに会いたい

「もしもし？」

「あ、はる？」

「うん」

「ごめんね、電話大丈夫だった？」

「大丈夫だよ」

「LINEしてたら声聞きたくなっちゃって…」

「うちも麻衣の声聞きたかった」

「本当？」

「本当（笑）」

「選抜の練習沢山あるの？」

「うーん、週5？」

「大学の練習は？」

「選抜練習と被ってなければ行くよ」

「それじゃはるのお休み無くない？」

「そうだね（笑）」

「…図書館来ないの？」

「1日練習じゃなければ、午前か午後どっちか行くよ」

「本当⁉︎」

「本当（笑）」

電話越しにはるが優しく微笑むのが想像できる。

声から伝わるはるの優しさ

「会いたいね」

「えっ？」

「麻衣に会いたい」

だめ、胸が締め付けられて痛いよ

好きよ、はる

「うん、私も会いたい」

「次いつ会えるかな？」

「はるの予定は？私ずっと暇だよ？」

「週明けにはそっち帰るからその時かな」

「じゃ、来週だね」

「楽しみだね」

「うん！楽しみだね」

好きと言ってしまいそうになった

でも、きっとはるを困らせるだけだからもうこの気持ちは言えない

はるの優しさに甘えてる私は、

これ以上はるを苦しめちゃいけない

ねぇ、はる

早く帰って来て

早くあの優しい笑顔を見せて

言葉に出来ない分、

“友達”として傍に居させて？