毎日千字帖
DJ T-ono a.k.a. 小野利益
開帖宣言
一日千字。それを繰り返せば、一月後には3万字の立派な小説が一つ出来上がる。とても当たり前ではあるけれども、しかし考えれば割とすごいことである。書いてみればわかるが、千字というのは結構簡単に達成できるものだ。それが判明した時、僕は拍子抜けしてしまった。小説とはいとも簡単に書けるものだ。小説家への道がかなり見えてきたような気がした。
・・・フラグである。もちろんそんなに道のりが甘ければ、僕の作品一覧が空なわけがない。千字を稼ぐことは容易い。だがその千字で書くべき肝心要な物語は、残念ながら明確な形を持ってはくれなかったし、その形を見定める前に、自分からその作品から遠ざかってしまった。結局のとこ、いつか敬虔と技術が降ってきて小説家になれるのだろうと慢心していた、自分の今までの鍛錬不足の表れに他ならないのだろう。万字単位の長編など夢のまた夢。或いは、現実とはこのようなものなのか。
そんなこんなで、遂に大学では後期が始まってしまった。文芸部の部誌には一作も寄稿できていない。このままでは本当に小説家になれずに三十路前に大阪環状線新快速の前に身を投げ出すことになるだろう。JR西日本にとってはそこそこの損失だ。この私鉄大国関西において、10分の遅延は30パーセントのシェア喪失に等しい。日ごろ嵯峨野山陰線でお世話になってるJRには迷惑はかけられないし、何よりJRの首元を狙う阪急は不便極まりないのだ。
ともかく、近畿地方の鉄道網のためにも、僕は小説家にならなくてはならないし、小説家になるためには描写力と論理力と集中力とひらめきが不足している。果たして難が足りてるんだ。要するに絶体絶命なのだ。しかし、これらの能力は決して才能にも環境にもあらず、みずからの努力と鍛錬で培えるものだ。そうでなくては本当にどうしようもない。
だから、僕は今日から一日千字を欠かさず書こうと思う。振り返れば、かの村上春樹は長編を書くとき、四百字詰めを10枚見当、要するに四千字目安で原稿を書くことをルールとしている。西尾維新は、日に2万字書けなければ、その原稿を一からやり直すそうだ。さすがに駆け出しの大学生が彼らのペースを維持することは不可能に近い。だが自分でペースを作り、守ることはできよう。そしてそれをなしえていくごとに、自然と自分に今何が具体的に足りないのか、何を書きたいのかがわかるはずだ。いや、わからねばならない。
カクヨムに公開するのは後戻りができなくするためだ。ここに乗るのは大した物語じゃないかもしれない。だが是非あなたの目で見届けてほしい。この阿呆な大学生の試みが、三日天下に終るのか、一冊の本にまとめられるのかを。
201609270023/1,101 words.
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