第17話 ナーガ

【概要:アモンvs魔獣ナーガ】


「硬すぎて銃でも爆薬でも傷つけられない化け物…

 だがまあ、フタを開けてみりゃ何のこたあない。

 こいつの場合、目隠しすりゃ済んだ話だってことだよな?

 まったく学者っていっても意外と抜けてんだよなぁ」


布で目隠しされて横たえられている一つ目の化け物。

その脇でライドーがそうつぶやく。


通路の奥ではアモンがその様子を腕組みをして見ていた。

ライドーはアモンの方を向き直りこういう。


「こういう研究施設って維持費もバカにならんでしょ?

 それもこいつらを閉じ込めて置くだけで、手一杯で

 研究どころじゃないなんて、無駄でしかないわな」


「アモンさん…あんたを呼んだのは、他でもない。

 こういうのが、まだ奥に一匹いるんだ。

 少しコレより…大きいのがね。それを始末してもらいたい」


「そうそう報酬の件なんだが、相場よりもっと上げても…」


そこでアモンは、無言で首を横に振った。

アモンの出す条件はいつでも一つ。相手が《強きこと》である。

人命のかかっている依頼の場合以外、この条件に当てはまらないものは

断っていたのだ。


「ああ、そうだったな。勿論強いよ。軍隊総出でこの施設に誘導して

 閉じ込めるだけで手一杯だったらしいからな。だが、その施設内の

 分厚い壁も次々とブチ破られていてね。今日か明日にでも自力で

 外出しちまうって話なんだわ」


その時、鉄のひしゃげる音と共に通路奥の装甲扉が大きくたわんだ。


「ね?」


「それじゃ、後頼むわ」


ライドーはそういってその場から走って逃げ出した。


アモンは、ゆっくりと腕組みを解き、パンプアップ。

数秒後には戦いの準備は整っていた。


直後、はじけた扉とともに踊りかかってきた異形の化け物。

その姿にアモンは驚愕する。


まるで神話の時代から出てきたかのような異質感。

巨躯のアモンを上回る圧倒的巨躯。

その姿はまさに半人、半蛇のナーガであった。


アモンは、踏み込んで、右拳の一撃をナーガの顔面にブチ当てた。

岩をも砕くアモンの剛拳。


ナーガは吹き飛んで地面に倒れ付すも、一瞬で体勢を立て直し

アモンへと向かう。


今度は左右に体を振って近づく。狙いを定めさせないためであろう。

アモンは、体の動きを見切って、再び踏み込んだ。


だが、拳を振るう前に、アモンは真横へと吹き飛ばされる。

尻尾の一撃である。体をオトリに尻尾の一撃を叩き込んできたのだ。


装甲壁に突き刺さってようやく止まるアモンの体。

常人ならば3度は死んでいたであろうほどの衝撃。

喀血するアモンであったが、その目は死んでいない。


さらに追撃を加えんと、ナーガは両手を拡げ、大口を開けて襲い掛かってきた。

爪、爪、牙。

両手ではさばききることが出来ない3箇所同時攻撃。

獣のもっともシンプルでベストな動き。


アモンは、両手でナーガの凶悪な爪を携えた腕を捕らえた。

そしてそれをクロスさせ、ナーガの顔の前に。


それでナーガの動きが一瞬止まる。

すかさずアモンは、渾身の一撃をナーガの顎に叩き込む。


空高く吹き飛び落ちるナーガ。

だが止まらない。再び、アモンに踊りかかってくる。

しかし、その動きは先ほどまでの精細を欠いていた。


止めの一撃を放つアモン。ナーガは仰向けに倒れ沈黙。

すべてはその一撃で決まったのだ。


「いよっしゃああああッ!!!」


沈黙したナーガを見定め、ライドーが飛び上がって喜ぶ。

それに釣られるかのように、どこからか出てきた

研究所の職員と思われる者たちも抱き合って喜んでいた。


今まで、どうすることもできずに振り回されてきた

厄介者を今、倒したのだ。無理もないことであった。


頭部から出血するアモンを他所に、はしゃぎまわる男たち。

シャンパンを開けて回りに振りまく男も出始めた。

アモンはただその様子を苦々しい表情で見ていたという。

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