第13話レップ

【概要:アモンvs漁師ガイ】


ここは港町シオン。

ラーマ大陸西岸に位置する港町であり、

漁業のみならず木工細工やガラス工芸でも有名な町であった。


ここにアモンはいた。

町で年に一回開催する『レップ』という大会にエントリーするためである。


レップとは、地元の言葉で『押し上げろ』『戻せ』

などの意味合いがある漁師言葉であり1000年以上の歴史を持つ言葉だ。


シオンの漁師は代々、この言葉を掛け合いながら

互いを鼓舞し過酷な漁を乗り切ったと言われ

漁師の安全祈願や厄払い、および身体鍛錬の名目で始まった

大会がこのレップだという。


ルールは互いにレップという掛け声を掛け合いながら重しを満載した

荷車を持ち上げ続け、先にギブアップした方が負けという

大変シンプルな試合内容だ。


ちなみに掛け声はレップ以外は認められていない。

この掛け声には安全祈願や厄払いの意味合いも込められているので、

それ以外の掛け声は、縁起が悪いとの判断である。

アモンもその旨はエントリー前に口頭で説明された。


そしてエントリーを済ませたアモンは順調に勝ち進み

ついに決勝まで歩を進める。


対戦相手は、老齢の漁師の男。

その筋肉量はアモンにさえ引けを取らないほどに張り詰めていた。


審判役の男が、両者を互いに握手させ

両者は荷車の前で身構える。


「初めッ!!」


「レップッ!!!!!!」


開始の合図とともにアモンが先に仕掛けた。


「レえええええップッ!!!!」


漁師の男も返す。


「レップッ!!」


アモン。


「レップッ!!」


漁師の男。


「レップッ!!」


アモン。


「レップッ!!」


漁師の男。


「レップッ!!」


アモン。


「レップッ!!」


漁師の男。


「レップッ!!」


手に汗握る攻防。

両者ハイペースを崩さず、すでに平均回数の倍は

軽くこなしている。だがしかし互いに一歩も引く様子はない。

ギャラリーは、プライドを賭けた両者のバトルに

惜しみない歓声を送っている。


アモン。


「レップッ!!」


漁師の男。


「レップッ!!」


アモン。


「レップッ!!」


漁師の男。


「レップッ!!」


アモン。


「レえええええップッ!!」


漁師の男。


「レえええええップッ!!」


アモン。


「レーーーーーープッ!!」


漁師の男。


「レーーーーーープッ!!」


アモン。


「プレーーーーーッ!!」


漁師の男。


「プレーーーーーッ!!」


アモン。


「プレーーーヤアーーープレーーッ!!」


漁師の男。


「レイーーーーーーーープッッ!!」


アモン。


「レイーーーーーーーープッッ!!」


漁師の男。


「レイーーーーーーーープッッ!!」


アモン。


「プレッッ!!プレええええええッ!!」


漁師の男。


「レイーーーーーーーープッッ!!」


アモン。


「フォウッッ!!!!」


漁師の男。


「アウェーーーーーーイッ!!」


アモン。


「フェイッ!!」


漁師の男。


「フェイッ!!フェイッ!!フェイッ!!」


アモン。


「フォッ!!」


漁師の男。


「フェイッ!!」


アモン。


「フィアッッ!!」


漁師の男。


「フィアッッ!!」


アモン。


「フィアッッポ!!」


漁師の男。


「フィアッッ!!」


アモン。


「フォッッ!!」


漁師の男。


「サァアアッ!!!」


アモン。


「サミアバヌーッ!!」


漁師の男。


「フォッッ!!」


アモン。


「マアアアアアアアッ!!!」


漁師の男。


「マイククリスチャンッ!!!」


アモン。


「パンプアップッッ!!」


漁師の男。


「パンプアップッッ!!」


アモン。


「パンプアップッッ!!」


漁師の男。


「パンプアップッッ!!」


アモン。


「オアアアアアアアッッ!!」


漁師の男。


「アルバートべックルスッッ!!」


アモン。


「オーパップッッ!!」


漁師の男。


「オーバップッッ!!」


アモン。


「オーバップッッ!!」


漁師の男。


「オーバップッッ!!」


アモン。


「マアアアアアアアッ!!!」


漁師の男。


「マイククインッッ!!」


アモン。


「オーバップッッ!!オーバップッッ!!オーバップッッ!!オーバップッッ!!

 バーッ!!バーッ!!バーッ!!バアアアアアアアッッ!!!ッ!シュワチャンッ!!」


漁師の男。


「オリバッ!!」


ついに荷車を持ち上げきれずヒザをつく漁師の男。

長い闘いをアモンが制した瞬間である。


二人は、再び固い握手を交わす。

そこへ惜しみない声援と拍手を送るギャラリー。

まさしく大会史上最高レベルのバトルであったからだ。


互いを称えあい、両者は試合場を降りる。

しかし賞金は、3位の細工職人の男に贈られたという。

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