第2話パンプアップ

【概要:アモンvs山賊】


谷あいにある、ある岩山の洞穴。


そこでアモンと男たちは対峙していた。


男たちが手にしているのは刀、ナタ、斧、桑、槍。

総勢20名以上が各々の武器を持ち臨戦態勢に入っている。


男たちはこの周辺地域を荒らしまわる山賊である。

つい先ほど、いつもどおりに村を襲って多目の収穫を得たばかりであった。


そこへ熊のような巨躯の男。アモンが現れたのだ。


記憶を失った男アモン。

闘技場で目覚め、どこへともなくさ迷う内に、

この近くの麓の村にやっかいになっていた。


その礼もかねて村の女たちを取り返しにきた、という経緯である。


洞穴の奥で震えながら事の次第を見守る村娘。

アモンはそれを見て、構えを解き、服を脱いだ。


降伏のためではない。交渉のためでもない。

暑かったのでも、着替えるためでもなかった。


すべては制圧。相手を意を削ぎ、屈服させる方法。

そしてそれは何も相手を直接攻撃し倒すだけとは限らない。


「パンプアップッ!!!」


男はリラックスポーズを取りながら叫んだ。パンプアップと叫んだ。


パンプアップ。

旧世界のボディビルダーといわれる猛者たちが

編み出したといわれる。身体操作技法である。


各種ポージングと筋肉の収縮により、血流量を倍化。

筋肉の張り、艶、大きさを高め、さらに運動効率を

20%も引き上げるという高等技術だ。


これは相手を攻撃するための技術ではなく、

力を誇示し屈服させるための技術。


闘わずに雄同士の優劣が決まることの多い野生に学んだ

殺さぬための技。


リラックス。

ダブルバイセプス。

ラットスプレッド。

サイドチェスト。

サイドトライセプス。

アブドミナル&サイ。

モストマスキュラー。

オリバーポーズ。


矢継ぎ早にポージングを決めるアモン。

その動きは流麗かつ、美麗。


究極とも言える肉体と洗練されたポージングの魅せる

総合芸術。


その筋肉と動きを見ていた山賊たちは、次々と持っていた武器を地面へと落とし、

感嘆の表情を浮かべる。


その内の一人は静かにこういった。


「ビューティフル……」


彼らにはもうアモンと戦う意志など残ってはいなかった。

数刻後、麓への道に村娘たちを抱えて山を降りるアモンの姿があったという。

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