Ⅱ
すると、フィと姿が見えない時もあったり、でもココのどこかに居る様な
見つけて『遊ぼうよ』と誘うと、【猫じゃらし】なんかで騙されないよ!
と知らんぷり。犬なら尻尾を振って気持ちがわかるのに。こいつときたら
喜んでいるのかどうかも、良くわかんないや。
フラーとどこかの隅で寝ていたり、ムックリ起きてわざと私の前を通って
素知らぬ顔を決め込んで、高くは無い戸棚の上から、時折チラチラこっちの
様子を伺っては、丸まって和んでいる。たまに誰の気配も無いとわかると
キラキラ光るやつと、飛び跳ね、ムキになってじゃれついている様だ。
昼下がり、街の隅っこで君を見かけたんだ。仲間と一緒のようだった。
ちょっと意外な気がした。でもよく見ると、仲間の中に居ると言うよりは
仲間の傍に佇むのが気に入ってる様に、見せかけているみたいに見えた。
仕切りに身づくろいを丹念にして 注目されたがってるようにも見えた。
だからさぁ「お風呂に入れてやろう」て言ってるのに、嫌がるから…
しっかり洗えばさっ、ピッカピッカに輝って、カッコよくしてあげるのに
そうすれば、イヤでも誰もが見てくれるさっ。でも、人にされるのは
嫌なんだろうね。自分でヤルから好いんだろうね。私は、細く笑んだ。
夕暮れ、また君を見付けたあの木に、君が居たんだ。
「また飽きもせずどうして?」と思った。けれど前と違って、もっと高い枝に
体を精一杯伸ばして、攀じ登ろうとしてる。私が手を貸せば、あそこに届くのかも?
手を出そうとして止めた。そうソレを望んでいるんじゃないと思ったし
よじ登るのが結構面白いみたいだ。しばらく眺めていよう。私はベンチに
腰下ろして、一緒に足や手に力を入れながら、落ちない様にだけ願い
目を細め見上げてた。
どれだけか時が経つと、君は私に気付いた。不乱によじ登っていたのを止めて
何も無かった様に、聞こえない程の声で、ちょっぴり鳴いた。私も聞こえない
フリで、またベンチの上に立ち上がって、手を伸ばした。細い足取りで 腕に
入ってきた。あったかかった。いや互いに、カラダは冷えていたけれど、体の芯が
熱かったから、きっとそれが同調してあたたかく感じたんだと思う。
そのまま連れ帰り、倒れる様にBEDに入って、つかまる所のない冬の晴れ空を
漂うように、穏やかに眠りに就いた。
私は目覚めてもここに居て欲しいと願いながら。。。
でも 夜更けまでは感触があったはずなのに、もういなかった。
もしかすると、またあの木によじ登っているのかもしれないと私は思った。
ならそれも良いかなって、ちっちゃく微笑むコトが出来た。だってあの木は
朽ちては無い。新芽が出て、その向こうに朝日が昇るのを見れたのだから。
今は登れなくても、君も力強くなる。あの芽も、幹を太くしてステップとなり
届かなかった枝へ行ける時も来るだろう。もっと次の高くて立派な枝にも
登れる。そして柵の向こうへも、その先の明るい野原へだって飛び込めるよ。
其処には、沢山の緑の葉を一杯茂らせた、大きな根を持つ樹の森があって
春の空の下、丸ごと体温の違いも感じない程の仲間達と戯れるんだろう。
君は気付いているのかな?あの新しい芽吹きを…
踏み潰さない様に、ゆっくりでいいんだよ。
私のBEDには あの頃の裸足で走った草原の空の匂いして キラッと笑えた。
そして、あの新芽に誓って・私は私を生きようと・
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