かぜのよる
熱に浮かされて ひとりきり
浅い息で 寒くって 寂しくて
冷たい海を ゆらゆらと漂うような 眠りの中で
あなたの 大きな手が
わたしの額に そっと触れてきたのが わかった
さっきまで ぼんやり聞いていた かちゃかちゃという音
少し水気を残した ひんやりした手
ふわっと ゆうげの匂いが あなたの体から 落ちてくる
あなたの料理は 不思議で美味しい
野菜炒めの 隠し味だと言って 豆乳を入れてみたり
おでんに 冷凍食品の つくねの照り焼きが入っていたり
カレーに 大きなバナナをみつけたときには びっくりしたっけ
思い出して ふっと心が笑ったら
額に乗っていた手が 頭を撫でた
ごはん作ってみたけど 食べられる?
まだ ゆらゆらの 中にいるわたしは
少し水気を残した あなたの手が とても愛おしくて
ゆうげの匂いが とてもあたたかくて
だまって 頭を撫でてくれるあなたに 目を閉じたまま
けれど ひとりぼっちの 寂しい苦しみは
ゆらゆらするたび 溶けていく
あなたの手で ゆらゆら撫でられて 溶けていく
だから 苦しいけれど 幸せな
かぜのよるに なりました
温もった幸せの海に ゆらゆら漂う
かぜのよるに なりました
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