ひとりごと

新樫 樹

わたしの手のひらの中で

小さく小さくうずくまっていた あなたの手

人差し指をつかみ

親指をつかみ

やがて手と手とつなぐようになりました


まるで風船を空に逃がすのをおそれるように

力いっぱいわたしの手にしがみついていた やわらかな手は

今はなんの未練もないように

するりと不意にはなれていくようになりました


ふとわたしは おもうのです

わたしは風船を逃がしたくない こどもになっていないだろうかと


あなたがわたしの手を はなれていこうとしたときに

さぁ いっておいで

そう言って なんの未練もないように

するりとはなしてあげたい


山ほどの想いを

一瞬きゅっと握った ぬくもりにこめて

わたしはするりと はなしてあげられる母でありたいとおもうのです

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