第32話『ゴーレム戦隊 2』
ウッドゴーレムを倒し、一旦家に帰った敏樹は、高圧洗浄機をバッテリー式のものに積み替え、予備バッテリーも積んだ。
また、食塩水に関しては農業用貯水タンクから灯油用の18リットルポリタンクへ移し替える。
再度中学校を訪れた際、ゴーレム達はまた中央にもどっていたが、ウッドゴーレムの姿はなかった。
(アイツがいないと楽だなぁ)
敏樹は4体のゴーレムを誘導して校舎から離し、給食の搬入にバックで停め、荷台を開けて荷物を校舎に運び込んでいった。
「ぜぇ……ぜぇ……」
消火器10本に高圧洗浄機と予備バッテリー、予備の灯油入りポリタンク1個、食塩水入りポリンタンク5個、簡易ナパーム剤入り火炎瓶数本と500ミリリットルペットボトル40本、火炎瓶添加用ライターオイルに点火ライター、石灰入りオブラート50袋に粉末にがり入りオブラート50袋と、かなりの量の荷物を急いで運び込んだため、かなり息が切れてしまった。
これを更に屋上まで運ぶとなるとかなりの重労働になるが、敏樹は便利なものを思い出していた。
給食運搬用のエレベーターである。
「動いてくれよぅ…………よしっ!!」
どうやらこのエレベーターは使えるようである。
エレベーターの近くにカゴ台車があったので、そこに降ろした荷物を積んでいった。
これは数人前の食事を運ぶ配膳用エレベーターではなく、各階の生徒ほぼ全員分の給食や食器を一気に運ぶための貨物用エレベーターなので、かなりの積載量を誇っており、荷物はすべて積み込むことが出来た。
エレベータを三階に移動させた後、敏樹は階段で三階まで駆け上った。
ここから先は自力で運ぶ必要がある。
カゴ台車を使って廊下を移動し、あとは屋上へ。
校舎外からの搬入時と異なり、ここではゴーレム達に襲われる恐れもないので、ゆっくりと荷物を運んでいく。
「あぁー疲れた!! 帰ろっ!!」
屋上へすべての荷物を運び出すのに体力を使い果たした敏樹は、一旦家に帰ることにした。
帰りに少し高めの焼肉屋へ行き、約1万ポイント分を平らげ、その日は疲れを癒やすべくゴロゴロした。
翌日、再び中学校を訪れる。
一応確認すると、ゴーレムは残り4体のままだった。
報酬が入らなかったので、もしかしたら日をまたぐとウッドゴーレムが復活するのではないかと少し不安だったが、そういうことはないようだった。
車は昨日停めた給食の搬入口に停め、校舎内を移動して屋上へ向かう。
単純に屋上へ行くだけなら中央入口を使うのが一番近いのだが、万が一途中で撤退する場合、ゴーレムは中央入口に集まっている可能性があると考えたからである。
そのまま中央階段を登り、屋上へ。
「おーい!!」
ゴーレム達が運動場でウロウロしていたので、気づかせるために呼びかける。
あとは来たやつから順に攻略していく。
4体のゴーレムの間に速度的な差はないようだ。
こちらに気づいた時の位置の差が、そのまま到着順となる。
最初に到着したのはファイアゴーレムだった。
敏樹は消火器を手に取り、容赦なく吹きかけた。
ファイアゴーレムだけ少し突出していたので、出来れば早めに倒したいところだ。
消火器の白煙で視界が遮られると、他のゴーレム攻略に支障が出るかもしれない。
最悪、一体ずつ倒して撤退し、態勢を立て直すという方法をとればいいのだが。
2本、3本と消火器を空にしつつ、消火剤を吹きかけていく。
高所から吹き下ろす形になるので、かなり効率よく消火剤がかかっていく。
最初の方こそ白煙に巻かれてのたうち回る姿が見えたものの、今は白煙に隠れて見えなくなった。
そうこうしている内にサンダーゴーレムが到着するのが見えた。
しかし、すぐ白煙に紛れてしまう。
続けて、アイスゴーレム、マッドゴーレムも到着する。
位置関係としては、ファイアゴーレムがいた場所を中心に、右隣にサンダーゴーレム、そのさらに右隣にアイスゴーレム、そしてファイアゴーレムの左隣にマッドゴーレムという風になっている。
アイスゴーレムは幸いファイアゴーレムより離れた位置におり、なんとか視認出来たため、まずはそこに灯油をかける。
高圧洗浄機から噴射される灯油を受けたアイスゴーレムは、最初こそ厭うように腕を振り回していたが、特に害がないと判断したのか、壁に取り付いてよじ登り始めた。
(お、こいつら壁登れんのか?)
アイスゴーレムが壁をよじ登っているとこ言うことは、白煙に紛れた他の二体も同じように登っているはずである。
とりあえず比較的近い位置にいるはずのサンダーゴーレムを警戒しつつ、アイスゴーレムに灯油を書け続ける。
やがて、白煙の中から壁をよじ登ってくるサンダーゴーレムを確認できた。
校舎は3階建てであり、サンダーゴーレムは2階部分まで来ていた。
敏樹は灯油の噴射をやめ、食塩水入りのポリタンクを開ける。
ヘルメットのバイザーをおろし、ポリタンクを抱えてサンダーゴーレムに食塩水をかけた。
例のごとくバチィ!! という音共にサンダーゴーレムがスパークする。
敏樹は前回の教訓を活かし、バイザーを偏光バイザーに換えていた。
偏光バイザーのみでは性能が足りないと判断し、偏光フィルターも重ね貼りしている。
そのため敏樹は視界を奪われることなく食塩水を撒き続けることが出来た。
そしてサンダーゴーレムのスパークした火花が灯油に引火したのか、アイスゴーレムが炎に包まれた。
18リットルの食塩水入りポリタンクを空にした敏樹は、ナパーム剤入りのペットボトル5~6本を手に取り、炎に包まれたアイスゴーレムめがけて投下する。
ナパーム剤入りのペットボトルが炎で溶け、中で気化したガソリンに火がつき、小さな爆発を起こす。
燃料を追加された炎は勢いを増し、身体の表面からじわじわと溶かされていったアイスゴーレムはやがて自重を支えきれなくなり、壁から落ちた。
この時点で既にアイスゴーレムは2階部分まで登ってきており、落ちた衝撃にバラバラになる。
その後も炎は燃え続け、アイスゴーレムは消滅した。
アイスゴーレムにナパーム剤を投下後、敏樹はある程度効果を確認するだけにとどめ、今度はオブラート入りの石灰と粉末にがりを抱えられるだけ抱え込み、マッドゴーレムに向かて投下した。
サンダーゴーレムは食塩水による放電の効果で少し動きが鈍っている。
遅れていたマッドゴーレムがサンダーゴーレムに追いつきそうな勢いだったので、牽制の意味も込めて一旦攻撃することにしたのである。
さらにもう一抱えばら撒いた後、3階部分に到達したサンダーゴーレムに向かって食塩水をかける。
「籠城戦かよ!!」
せわしなく動きつつ、つい文句の出てしまった敏樹であったが、なんとなく勝ちは見えていた。
サンダーゴーレムはどんどん動きを鈍らせており、マッドゴーレムも徐々に固まり始めている。
弱々しい動きで屋上に手をかけつつあったサンダーゴーレムだったが、敏樹はその頭上に食塩水が満たされた18リットルポリタンクを叩きつけた。
かろうじて自重を支えていたサンダーゴーレムは、ポリタンクの衝撃と重さを受けて自身を支えられなくなり、あえなく落下した。
地面に落ちたサンダーゴーレムは、少し痙攣しているように見えた。
敏樹はさらにポリタンクを落とす。
ポリタンクは地面に倒れたサンダーゴーレムに命中し、それが止めとなったのかサンダーゴーレムは消滅した。
残るマッドゴーレムは既に固まっている。
固まったまま壁に取り付いていたので、壁を掴んでいる手を狙って、至近距離から高圧洗浄機で灯油を噴射した。
勢い良く吹きかけられる灯油の圧力で手がボロボロと崩れていき、やがて体を支えられなくなったマッドゴーレムは落下した。
地面に激突したマッドゴーレムは、そのまま粉々に砕け散り、やがて消滅した。
この時点でようやく消火器の白煙が晴れ始めたが、ファイアゴーレムは既に消滅済みのようだった。
5,175,753
(おおう、倍!!)
1体あたり50万ポイントのゴーレム5体で250万ポイントの所、なんと倍の500万ポイントが加算された。
確かに一体ずつ倒すのに比べればかなり難易度は高いので、妥当なところかもしれない。
校舎が使えたおかげで随分と楽はできたのだが。
敏樹は屋上の荷物の内、持てるものだけをもって車に戻った。
残りは後日回収する。
(せっかくだし、高校に行ってみよう)
ルート次第で帰り道となる高校へ寄ってみる。
そして、入ることのできなかった運動場へあっさりと入ることが出来た。
やはりというべきか、中学校の攻略が高校に入るための条件だったようだ。
(さて、次はどんなやつが出るかな)
ゴーレムであれば楽勝とは行かぬまでも、なんとかなると思い、敏樹は軽い気持ちでドアを開けた。
そして運動場の中央に新たなボスが現れる。
それは3階建て校舎の屋上に届きそうな、10メートルほどもある巨大な岩のゴーレムだった。
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