第29話『ゴーレム戦 2』
(前回は火を消したから、今回は火をつけよう!!)
というわけでもないが、とりあえずアイスゴーレムとウッドゴーレムに対しては炎を使うのが妥当であろう。
そして炎攻撃はキマイラ戦で実践済みなのである。
まずはアイスゴーレムと戦う。
装備に関しては雪山登山に使えそうな寒冷地仕様の服装を用意した。
簡易砦は今回も使用する予定だ。
断熱という意味では耐熱も耐冷も変わらない。
火球のような攻撃方法が無いとも限らないので、念には念を入れたほうがよかろう。
数日後、耐寒装備を整えた敏樹は、軽バンで小学校へ行き、例のごとく敷地内ギリギリで運転席のドアを開ける。
「うぅ、寒っ……!!」
ドアの隙間から冷気が流れ込んでくる。
そして運動場の中心にはアイスゴーレムが現れた。
ファイアゴーレムやマッドゴーレムと変わらない速度でノッシノッシと近づいてくる。
敏樹は今回、車からは降りず、まずは攻撃パターンを確認することにした。
しばらく様子を見ているが、10メートルの距離まで来ても、遠距離攻撃を仕掛けてくる様子はない。
ファイアゴーレムも最初はそうだったことを思い出す。
そのままギリギリまで近づいたところで、アイスゴーレムは腕を振り上げた。
(なるほど。まずは直接攻撃を行うわけだな)
アイスゴーレムが腕を振り下ろす前に運転席のドアを閉めた敏樹は、そのまま車を発進させた。
そしてアイスゴーレムに背を向ける形で距離を取って車を停めると、運転席を降りて荷台のドアを開けた。
荷台から高圧洗浄機のノズルをとると、そのままアイスゴーレムに向かって駆け出す。
高圧洗浄機だが、以前使っていたバッテリータイプではなく、電源に接続するものを用意していた。
バッテリー式のものに比べて水圧が強く、射程距離も長い。
10メートルの高圧ホース付きなので、本体は車内に置いたままノズルだけを持ってアイスゴーレムに接近していた。
洗浄を目的とした場合は数メートルが効果範囲だが、液体を浴びせかけるのを目的とした場合、放物線を描くよう斜め上向きに放出すれば20メートル近くまで飛ばすことが出来る。
敏樹が駆け寄ったことでアイスゴーレムとの差は一気に縮まり、20メートルを少し切ったところで灯油を放出した。
最初は構わず前進していたアイスゴーレムだったが、12~3メートルぐらいのところでようやく灯油を書けられている事に気づき、嫌がるように腕を振り回し始める。
その間も敏樹は容赦なく灯油をかけ続けた。
そしてひとしきり腕を振り回したあと、無駄と悟ったのか、アイスゴーレムは敏樹に向かって手をかざした。
「うひょー!!」
ある程度予想がついていた敏樹は、ノズルを持ったまま高圧ホースを手繰りつつ車へとかけ戻る。
そして急いで荷台から乗り込み、後ろを向くとちょうどアイスゴーレムの手から氷の塊が飛んで来る所だった。
「よっこいせっ……と!!」
荷台のドアの内側に紐をつけていた敏樹は、それを引っ張り急いで荷台のドアを閉めた。
そのまま運転席に移動し、車を発進させる。
ハンドルを右にきりつつ車を前進させ、アイスゴーレムの左側へと距離を取る。
ハンドルを切って大きく迂回し、アイスゴーレムガイルであろう場所を正面から捉える形で来る、間を停め、運転席のドアを開けた。
「お、いるいる」
ちょうど正面にアイスゴーレムを捉えた敏樹は、向こうが気づく前に手早く運転席のドアを閉めた。
そして荷台から簡易ナパーム剤入りの火炎瓶とペットボトルの入ったバックパックを取り、火炎瓶を手に取った。
火種にライターオイルをかけて湿らせ、火をつけた後に運転席のドアを開けて素早く車を降りる。
そのまま運転席のドアを閉め、アイスゴーレムに向かって駆け出した。
筋トレのおかげて多少遠投の距離が伸びた敏樹は、アイスゴーレムが氷塊を放ってくるであろう20メートルより離れた、30メートル地点から火炎瓶を投げる。
アイスゴーレムの足元で砕けた火炎瓶は、勢い良く炎を上げた。
ただ、アイスゴーレムにかかった灯油は大半が気化たのか、それほどの勢いでは燃えなかった。
それも想定内ではあったが。
「ほい! ほい! ほい! ほい!」
今回用意したナパーム剤入りペットボトルは合計20本。
キマイラ戦のときは気化したガソリンの爆発によるダメージを与えるため、ペットボトル内のナパーム剤は半分程度だったが、今回は燃焼を重視し、ナパーム剤はほぼ一杯に詰まっている。
それでも多少は気化したガソリンが詰まっているので、火炎瓶の炎にさらされたペットボトルは、小さな爆発を起こした。
そのお陰でナパーム剤はアイスゴーレムの身体に飛び散って付着し、どんどん炎は広がっていく。
20本すべてのペットボトルを投げ終えた敏樹は、のたうち回るアイスゴーレムを無視し、さっさと車に戻って運転席のドアを閉めた。
「おお、燃えとる燃えとる」
車のドアを閉めたためアイスゴーレムの姿は見えなくなったが、アイスゴーレムを包む炎は敏樹が作り出した自然現象である。
炎が見えなくなることはないので、敏樹は安全な場所から様子を見ることが出来た。
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結局、簡易砦を使うことなく、敏樹はアイスゴーレムを倒すことが出来た。
(この調子でウッドゴーレムも消し炭にしてやるぜ!!)
**********
翌日、敏樹はウッドゴーレムのいる小学校を訪れた。
身につけているのは普段の装備で、一応簡易取りでも積んである。
高圧洗浄機のタンクには灯油が満たされており、ナパーム剤入りの火炎瓶とペットボトルも用意してあった。
例のごとく敷地のギリギリに車を停めた敏樹は、運転席のドアを少し開ける。
運動場の中央にウッドゴーレムが出現。
気づいたウッドゴーレムは、敏樹の方に向かって
「って、うえぇ!?」
数秒でウッドゴーレムの接近を許した敏樹だったが、間一髪のところで運転席のドアを閉めることが出来た。
ウッドゴーレムは走った勢いのまま、右フックをかまそうとしていた。
例え木製とはいえあの巨体に殴られたら軽バンのフロントガラスなどひとたまりもあるまい。
たとで簡易砦を組んだところで簡単に破壊されるだろう。
あのスピードで駆け寄られたのでは、灯油をかける暇すら無い。
今にして思えば、最初の遭遇の時にウッドゴーレムが走っている姿を見ていたはずなのだが、すっかり失念していた。
「まいったなぁ……」
運転席のドアでしばらく頭を抱えていた敏樹だったが、とりあえず一度家に帰ることにした。
(さて、どうしたもんか)
ガレージに車を停め、降りたところでふと米国製の大型車が目に入る。
「あ、そっか」
何かをひらめいた敏樹は、米国車に高圧洗浄機と、火炎瓶やペットボトルの入ったバックパックを積み替え、その日はとりあえず休むことにした。
英気を養うため、回転寿司屋で腹いっぱい寿司を食べた。
そして翌日。
耐衝撃装備を身につけた敏樹は、キッチンタイマーをポケットに入れ、米国車に乗り込む。
4点式シートベルトを締め、いざ小学校へ。
小学校に着いた敏樹は、運転席のドアを少しだけ開けた後、ストッパーで固定した。
そして駆け寄ってくるウッドゴーレムに向かってアクセルを踏む。
「オラァ!!」
車と接触したウッドゴーレムはバラバラに弾け飛んだ。
そして敏樹はキッチンタイマーをストップウォッチモードにし、スイッチを入れる。
「……8……9……10……お?」
バラバラになったウッドゴーレムの各パーツが寄せ集まり、再び人型を形成する。
そして敏樹を見つけたウッドゴーレムは、再び駆け寄ってきた。
敏樹はストッパーを外してドアを閉め、大きく息を吐きだした。
「10秒……ね」
最初の下見の時、ウッドゴーレムは衝撃でバラバラになることを確認していた。
そしてバラバラになった後、元に戻ることも。
しかし、元に戻るまでに少し時間があったのではないかと思い出した敏樹は、キッチンタイマーを使って戻るまでの時間を計ったのだ。
キッチンタイマーをカウントダウンモードに切り替え、8秒にセット。
ウッドゴーレムがいるであろう場所から距離を取りつつ迂回し、そこを正面から捉える位置に車を停めてドアを開ける。
敏樹を見つけたウッドゴーレムが駆け寄ってくるのを確認したところでアクセルを踏む。
衝突後ハンドルを右に切ってすぐにブレーキを踏み、キッチンタイマーを始動。
助手席においてあった高圧洗浄機のノズルを手に取り、運転席の隙間から狙える位置にあるウッドゴーレムのパーツに灯油をかける。
タイマーがなったら灯油の放出をやめ、運転席のドアを閉めて離脱。
再びウッドゴーレムの正面に見えるところで停車し、復活したウッドゴーレムに体当たりを加える。
以上の作業を何度も繰り返し、高圧洗浄機のタンクが空になるまで灯油をかけた後、衝突後の距離を多めにとって火炎瓶を投げた。
炎に包まれた一部のパーツがウッドゴーレムの身体に組み込まれ、灯油の染み込んだ他の部位にも引火して行く。
炎に包まれたウッドゴーレムがその場でのたうち回るのを確認した敏樹は、さらにナパーム剤入りのペットボトルを投げ続けた。
炎に包まれたウッドゴーレムがいつ捨て身の攻撃に移行するとも限らないので、車からは一切降りず、運転席のドアの隙間からすべての作業を行った。
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そして見事ウッドゴーレムを倒すことが出来た。
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