第2話 佐原さんと小鳥と鈴と(プロローグ)
佐原汐里。
一見普通の女子である彼女。
しかし、彼女の頭脳・機転は普通以上であることを私は知っている。
そんな普通に見えて普通じゃない彼女には、本音を話せるような友人もいなかった。
彼女自身、友人に嘘を吐いている気はないのだろう。
確かに彼女は
一種の「本音」と言えるだろう。
しかし、それが「本音」だとしても、彼女は心の底から話したいことを、伝えたいことを、口にはしていなかった。
したくない、と。
してはいけない、と。
自分の本音なんて、自分の本当に話したいことなんて、自分の見てきた謎解きと、自分の考え付いた謎解きの答えなんて。
誰も聞きたくないはずだ、と。
誰にも話したことはなかった。
だから彼女は唯一の趣味を、心の底から興味を持てる趣味である「謎解き」を、誰にも知られることは無かった。
だから彼女は「どこにでもいる普通の女子中学生」だと思われていた。
しかし────しかし。
ある日。
本当になんてこともなかった、ある日の昼下がり。
彼女は、とある小さな事件と遭遇する。
友人も知人もいない場所だったので、彼女はなんてこともない様に謎を解いていった。
普段ならたったそれだけの出来事。
の、はずだった。
彼が現れるまでは。
彼───佐倉春哉と出会うまでは。
彼が現れてから、彼女の世界観は変わる。
自分が今まで考えなかったことが、謎の答えに繋がることを、彼に教わり。
謎を解けない彼にヒントを与えた。
そんな二人を、私は凄いと称賛したい。
また、私は彼に興味を持つ。
彼───佐倉春哉に。
彼も一見すると普通の少年だ。
何処にも居そうな極々普通の、ありふれた日常を送っている少年。
でも彼には、彼女を───佐原汐里を興味付けるような「何か」がある。
佐原汐里を惹き付け、一緒に居たいと、本音を話したいと、謎を共に解きたいと。
そう思わせる「何か」を彼は持っている。
だから私は、彼に興味を持っている。
彼女を惹き付けてしまう、彼、佐倉春哉君に。
だから私はここに、挑戦状をだそう。
彼女に向かって、私の挑戦状を。
そうすると、彼と彼女は必ず共に謎を解く。
彼と彼女、同時に二人の事を見ていられるなんて、こんなに面白いことはない。
さぁ、この私が出した「謎」を、どう解いて見せるのかな?佐原汐里は。
───楽しみだ。
私は笑みを漏らした。
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