第4話
都市エルダンテから少し離れた森林に2人組の幼い男女が歩いていた。
「なんか流れで出てきてしまったけどこれからどうしようか……」
苦笑いしているレイ。
「私はマスターと一緒ならどこへでも」
「ありがとう。ペル。これからもよろしくね」
「はい、マスター」
少し照れた様子なレイととても嬉しそうなペル。
「とりあえずローランド帝国から出て、商業都市ファーハルトを目指そうと思う。それで良いかい?」
「かしこまりました。しかし乗合馬車などで行かずに徒歩で行くのですか?」
「ああ、徒歩で向かいながら魔物を倒したり野営することによって心身を鍛えるんだ」
「なるほど、さすがマスターです」
大きく頷いているペル。
「おしゃべりはここら辺までにして行くぞ」
「はい、マスター」
そして会話をやめて歩き出した2人だった。
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しばらく歩いていると小さな村が見えてきた。
「マスターマスター、なんか見えてきましたよ」
すごくはしゃいでいるペル。
「そうだな。確かバックスという村だったかな。100人くらい住んでいるはずだ」
「そーなのですか?お詳しいのですね。流石マスターです」
レイを尊敬の眼差しで見つめるペル。
しかしレイは、
「僕には何の才能もなかったからせめて勉学だけは頑張ろうと思ってね…………」
下を向くレイ。
そんなレイにペルは、
「そんなことはありません。レイ様はとてもお優しい方です。それに、それに…………レイ様は……」
何かいいたそうなペル。
「ありがとう。そう言ってもらえるだけで嬉しいよ。とりあえず今日はこの村に泊まろう。ほらいくよ」
手招きをするレイ。
「はい、参りま、っっっ!」
急に慌てて周りを警戒するペル。
不審に思ったレイは
「どうしたんだい?」
と尋ねる。
しかし、ペルは何も返さない。そんな緊張状態は数秒続くとやっとペルは、
「なんでもありません。すいません。では参りましょう。」
何事も無かったかのように歩を進めて村に向かって行くのだった。
しかしペルはなにか考えているようだった。
ペルはどうしたんだろうか?
レイの頭の中はさっきのペルの事でいっぱいだった。
「ところでマスター。この村に宿屋はあるのですか?」
少し不安げな表情のペル。
「確か星のたまり場っていう宿があったと思うよ」
「ありがとうございます。マスター」
「でも、これから野宿をしたりする時もあるかもしれないからね」
少し重い顔なレイ、しかしペルは、
「もちろん心得ております。私はマスターとならどこへでも参る所存でございます」
満面の笑みのペル。
「ありがとうね、ペル」
ペルから顔をそらすレイ。
「ほら、行きましょうよマスターー」
ペルが鈍感でよかった
レイは密かにこんなことを思っていたとかいないとか。
「マスター、あそこではないでしょうか?」
星のたまり場と書かれた看板が貼ってある建物を指さす ペル。
「うん、ここだね。入ろうか?」
少し不安そうな顔をするペル。
「どうしたの?ペル?」
「いえ、追放されてしまったのでお金は…………」
すごく悲しそうな顔のペル。
それを見たレイは、
「なんだ、そんなことか。お金なら倉庫からチョチョっとね」
と、悪い笑みを見せるレイ。
しかしペルは、
「そんな……すいません。元はといえば私があの時にあの様な態度をとってしまったからであって……すいません……」
下を向いて泣いているのか? しかたないなぁ
そしてレイは、
「ペル、いいかい?僕はあの家が嫌いだった。でも心のどこがで家族だからとかいつか認めてもらえるかもしれないとか思ってなかなか吹っ切れていなかったんだ。でもペルがあそこで父様---レオ=ランベルトに反抗して僕を追放させてくれたから僕は全てを吹っ切って自由になることが出来たんだよ。感謝こそすれ恨む筋合いなんてないんだ。ペル、僕は本当に君に感謝しているだ。だから僕に謝らないで欲しい。わかったかい?」
と優しい口調で言うレイ。
「ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます」
泣きながらずっとお礼をいうペル。
「ほら、こんな辛気臭いのはやめて早く宿で休もう……」
ペルの手を引っ張りドアの前まで行きそしてドアを開く。
宿の中はいたって普通だった。
レイはペルの手を引っ張って受け付けまで行く。
そこには12歳くらいの女の子がいた
宿の娘さんかな? まぁいいや
「すいません、2人で一部屋を1泊お願いできますか?」
「かしこまりました。1泊50コルになります。お食事とお湯はどうなさいますか? お食事は今日の夜と明日の朝を合わせると30コル、お湯は15コルになります」
「ならどちらもお願いできますか?」
「かしこまりました。それでは合計は140コルになります」
「はいっ!」
と、袋の中から銀貨1枚と銅貨4枚を出すレイ。
「はい、確かに。お湯はお部屋にお持ちします。お食事は食堂までお越しください。夜は7時から10時まで、朝は7時から9時までになっております。お部屋はそこの角を曲がった106号室をお使い下さい」
と、角を指さしながら鍵を渡してくる女の子。
「ありがとう」
レイとペルは鍵を受け取って部屋へ向かった。
宿屋の一室のベットの上にレイとペルはいた。
「マスター、夕食の時間まで何をしますか?」
「そうだなぁ……とりあえず……寝るか」
「寝るっ?!?!?!」
急に大きな声を出してびっくりするペル。
「どうしたんだ? ペル? ただ、ベッドで寝るだけだぞ? なんか変な事言ったか?」
不思議そうな顔をするレイ。
「な、なるほど。取り乱してすいません。では寝ましょう」
といって2人でベッドに横になった。
ペルの寝息が響く。
もうペルは寝ちゃったのか、やっぱり疲れてたんだな。お疲れ様ペル。
ペルの頭を撫でるレイ。
僕も寝るか。
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レイは夢を見る。
ある青年と、ペルにものすごく似た女の子と、もう1人全体的に白く華奢な印象の女の子が楽しそうに歩いている。
ここはどこだ? 夢なのか? それにあれはどう見ても……ペルだよなぁ。
急に辺りが真っ白になるぐらい光、先程までいた女の子たちが消え変わりに漆黒の剣と純白の剣が1本ずつ現れた。
なんだあれは? それにあの漆黒の剣は……やはりペルだ。
しかしこれは何なんだろう……。
夢は続く。
突如現れたのは全身真っ黒の黒いオーラをまとった人のような生物。
あれは人なのか?
レイの疑問など関係なしに、その青年はまるで瞬間移動をしたかのように真っ黒の生物の懐に入り、そしてそのまま一刀両断した。
その瞬間レイの意識は途絶える。
「はっ!」
突如叫び出すレイ。
今のは……………………。
レイが1人思考にふけっていると、
「どうかなさいましたか? マスター?」
隣で寝ているペルを起こしてしまった。
聞くべきか聞かないべき、
レイは迷っていた。
よしっ、
「いや、なんでもないよ。ごめん、気にしないで」
「そーでございますか…承知しました」
悲しそうな表情のペル。
また今度ペルに聞けば良いか。
ペルが悲しそうなのをお構いなしにレイはこう考えていた。
レイは話を変えるために、
「そんなことより、そろそろ食堂に行こう。終わってしまうよ」と切り出す。
「そーですね、参りましょう」
そして2人は部屋を出て一階にある食堂に向かうのだった。
「マスター、あそこでございます」
と、食堂の入口の方を指さすペル。
「そうだね、早く行こう。僕もうお腹ペコペコだよ」お腹をさするレイ。
「はい行きましょう」
扉を開けて中に入る2人。
中にはたくさんの人々が騒がしく食事していた。
「すごい数の人だね。空いている席はあるかな?」
「あそこにございますわ。ほらマスター行きましょう」
レイの手を引っ張るペル。
「よいしょっ」
席に座る2人。
メニューはAセット、Bセットのどちらかから選ぶようだ。
「ペルは何を注文する?」
「私はマスターと同じものをお願いします」
「了解、すいませんーー!」
手を上げながら大声で店員を呼ぶレイ。
すると受付で見た女の子が小走りで寄ってきた。
「はい、ご注文でしょうか?」
「うん、Aセットを二つお願いします」
「かしこまりました、では」
と言ってすぐほかのテーブルへ行ってしまう。
「忙しそうだね」
「そうですね。とても混んでいますから。しかし向こうの方やけにうるさいですね」
少し顔をしかめるペル。
「まぁ、仕方ないよ。酒場みたいなものだよ。少し見に行ってみる?」
悪い笑みを浮かべながらそう尋ねるレイ。
「少しだけですからね」
と言って立ち上がり、うるさい方へと歩を進めていく2人。
そこでは女性と男性が飲み比べをしているようだった。
男性の方は、今にも倒れそうなほど酔っているようだ。
「ふふふっ、私、シェリー=ローズに勝とうなんて100年早いわね」と叫ぶ飲み比べをしていた女性。
シェリー=ローズ?? あれっ? どこかで聞いたことあるような
そんなことを考えていると突然その女---シェリー=ローズがこちらに近づいてくる。
「あなた何者?」
ほかの人には聞こえないような小さな声で僕とペルに訪ねてくる。
落ちこぼれ精霊使いの英雄譚 朧月 @taku0812
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