憑かれた幽霊が熱血過ぎる!!
トマトも柄
第1話 熱血幽霊!
俺の名前は厚川
俺は幽霊に取り憑かれている。
その幽霊が何も喋らなければいいと思っていたのだが、
「何でそこでペンを止める! お前の実力はそんなもんじゃないだろ!! まだいける!! もっといける!! お前は頑張ったらいけるんだ!!」
非常にうるさいのだ。
「少し、静かにしてくれる? 明後日に試験があるからさ」
「知ってるさ! お前のスケジュールはチェック済みだからな! だからこそ! 俺はこうやって気合を入れているのだ! さぁ、ペンを走らせろ!! 勝吉!」
「勝手に人のスケジュールを見るなよ! プライバシーの侵害だろ!」
「幽霊にプライバシーなどない!!」
いや、あるからと言いたかったが、常識が通じないのは分かっていたので敢えて言わなかった。
「あのー。 タダシさん。 明後日に試験があるの分かってるなら、少し静かにしてくれないか? 集中出来ないから」
「何を言っているのだ! 俺は勝吉に気合を入れるために言っているのだ! 努力! 根性! 気合! これがあれば何でもいける!! 己の限界を引き出すんだ!!」
「暑っ苦しいわ!! それと、静かにしてくれって言ってんだろ!?」
俺がそう怒鳴ると、タダシは静かになった。
これで、集中出来る。
そう思っていたのだ。
ペンを走らせて、軽快な音を立てている。
ペンを走らせていると、不思議な音が聞こえてきた。
何やら、ブツブツと聞こえてくるのだ。
試しに、ペンを止めてみる。
すると、音は無音で何も返ってこない。
ペンを走らせると、またブツブツと音が聞こえるのだ。
「タダシ、近くに来て」
俺はタダシを隣に呼びつけ、ペンを走らせた。
すると、
「頑張れ頑張れ! もうちょっとだ! もうちょっとで行ける! そうだ! 焦らずにもうちょっとだ!」
「やっぱりお前かー! 小声で言ってんじゃねーよ! ぶつくさ言ってるのが聞こえてるんだよ! 」
「静かにしろと言われたから、静かに応援している!」
タダシはどうだ! と言わんばかりに鼻息を立て、自慢げな顔をしている。
「自慢そうにしてるんじゃない! 頼むから、静かにしてくれよ」
最後は俺が泣き言を言うみたいに言うと、タダシも分かってくれたのか、黙って頷いた。
「すまなかった。 邪魔をしてるだなんて思って無かったからさ。 今から、静かにするよ」
「お、おう。 分かってくれたらいいんだ」
勝吉は少し動揺しながら、タダシの素直な気持ちに感謝した。
そして、再び、勝吉はペンを走らせた。
カリカリ……カリカリ……。
カリカリ……イラ……カリカリ……。
カリカリ……イライラ……カリカリ……。
勝吉は後ろを振り返り、
「後ろで、ラジオ体操してるんじゃねー!」
「静かにしろと言っていたのに、何だ? 俺は静かにしていたぞ」
「気配が伝わるんだよ! 行動も大人しくしろよ!」
すると、タダシは勝吉に手を向けて、少し静かにという合図を送るみたいな格好をした。
そこで、俺はハッと気付いたのだ。
今は夜である。
その夜にこんな大声を上げたら、周りに迷惑になってしまう。
そして、タダシは幽霊なので、タダシの声は聞こえない。
つまり、今の俺は大声で独り言を言っている変人みたいに見えているのだ。
「すまなかったな」
俺は、タダシが俺の事を考えて、手の合図を送っていたと思っていた。
そう思っていたのだ……。
すると、タダシがした行動は……。
深呼吸だった。
大きく息を吸い、大きく息を吐いて、満足な顔をしている。
「おい」
「どうした?」
「手の合図は俺の事を考えての合図じゃなかったのか?」
「何を言ってるのだ? 俺がやってる熱血体操が終わりかけだったから、きりのいいとこまで待ってくれって合図だぞ」
すると、俺は怒りという熱気のこもった声でこう言った。
「大人しくしろよ。 いや、本当に大人しくしてくれ。 俺言ったよね? 明後日試験だって。 マジでね、応援とかいらないからね。 俺は静かにして欲しいだけなの。 分かる?」
俺の熱気のこもった声に、タダシはガチガチ震えながら、ひたすら頷く。
「ねぇ? 分かった? 分かったね? 静かにするよね?」
「うん! 分かったから! その顔止めて! いや! 怖いから。 本当に怖いから!」
「誓えるか? 大人しくするって?」
「ひゃい!」
俺の言葉に、タダシはただひたすらに頷きながら、答える。
そこからは、タダシも大人しくなり、俺は勉学に励むことが出来た。
そうして、いつの間にか寝てしまっていたのだ。
机でぶっ倒れるように寝ていたのだ。
起き上がろうとした時に、何かが落ちた。
俺はその落ちた物が目に入った。
その落ちたものは毛布だったのだ。
横には、タダシがニコニコ笑いながら、俺を見ている。
「おはよう!」
タダシが笑顔で挨拶をした。
「おはよう。 毛布、サンキュー」
「何! いいってことよ! じゃあ俺は今から熱血体操の第二をやるから」
「おう」
俺はタダシに軽く返事をした。
俺は寝起きの体で、朝飯を食べて、学校に向かった。
タダシは俺に取り憑いてるため、俺のそばから離れなかった。
「じゃあ、今日も1日! 熱血に頑張りましょう!」
「そうだな。 頑張るか」
そして、俺とタダシはいつものように外に出た。
憑かれた幽霊が熱血過ぎる!! トマトも柄 @lazily
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