白い部屋

冷凍氷菓

白い部屋

白いカーテンが揺れてる

朝、目を覚ました私が最初に見たのは揺れるカーテンだった。その瞬間時間が止まった気がした。時計の針は動いている。私だけがきっとその時取り残されていたのかもしれない。

今まで何があったかを思い出そうとしてる。でも、何があったのか覚えてない。私はここに閉じ込められた。

私の第一声

「あぁ」

うめいたようなそんな声が虚しく響く

小さい部屋

白くて小さい

窓が一つあって風が入ってきてる。

外を見たい。

私は身体を起こし外を見ようとした。しかし、光が強く外の景色は見えない。目は白をとらえていて、三原色はうつらなかった。

裸の体に白いシーツをまとい、その何もない白を見続けた。

ここはどこ?

時計の針は動いていた

ドアはない出られない

出るとしたらこの窓しかない。でも窓の先には何もない。

出たらどうなるんだろう?

私は死ねるのだろうか?

ここで死ぬとして、今までの人生はどんなものだったのか?

終わる前に思い出せたなら少しは気も軽くこの窓から出るのに

私はこの光景が少し懐かしく感じてて、とても美しくも感じていた。

私は思い出すまでここから出ない。そう決めて壁を触りその感触を残そうとした。硬く何かが吸い込まれる気がした。何だろう。意識は霞んできてる。私はここで消えてしまう。そう感じたそして壁からそっと手を離した。

「私は誰なの?」

大きな声。部屋に響いて

白い部屋に淡く流れる映像

これは何

これが私の記憶なの?

友達と喧嘩してる

友達と遊んでる

誕生日だ

お父さん

お母さん

それに兄弟たち?

私の子供たち

私は死んだんだ

涙がこみ上げてきて悲しくなって私はこの窓から出ることにする

もういい

もういい

いい

窓から出た時、私は一瞬で幸せに包まれた。暖かくて暖かくて。


「こいつ、お前にそっくりだ」

「あなたにも似てるわよ。目元なんてほら!そっくりじゃない!」

「俺さ、こんな幸せでいいのかな」

「急にどうしたの?」

「いやなんかさ」


「お母さん私は今日変な夢を見たんだ」

「どんな夢?」

「なんかね。白い部屋でカーテンが揺れてたの」

「そうなの?」

「でもね私はここに戻ってきたんだよ!」

「ここって?」

「ここだよ!」


兄弟たちの声が部屋に賑やかに響いていた。そんな変わらない毎日


私が私に気がつくのはいつになるのかな永遠にわからない方が私のためだよ。

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白い部屋 冷凍氷菓 @kuran_otori

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