異世界女子校転生日記

@shio1202

プロローグ

どうして、こうなったのかは覚えていない。


わかるのは、俺の体が動かないこと。

激しい痛みと、流れ出る血。


そして、うっすらと見えるのは信号機に衝突した軽トラック。

遅れて、俺が軽トラックに轢かれたのだなと理解した。


ああ、これはもう助からないな。

悲しんでくれる人はいるのだろうか。


そんな考えが頭をよぎる。


やがて今までの記憶が浮かんでは消え、ああ、これが走馬灯というやつかと呑気な感想が頭に浮かぶ。


ああ、せめて。


――来世は、女子高生に囲まれて暮らしたいな。












――しばらくして、意識を取り戻す。


俺は死んだはず……ここは天国か?地獄か?と思いながら周囲を見渡そうとする。


思うように体が動かない。

もしかして一命をとりとめて病院に運び込まれたのだろうか?


……と思ったが、目の前に広がる光景はとても病院には見えない。


薄暗い部屋、蝋燭の炎、怪しげな水晶球、そして魔法陣。

一体何が起こったのだろうか?途方に暮れる。


「お気づきになられましたね」


声のした方に意識を向ける。

そこには20代~30代くらいの、怪しげな雰囲気の女性が佇んでいた。


(こ、ここは……?あなたは誰ですか?)


と問いかけようとしたが、声が出ない。


「ご無理をなさらず……まだ『その体』には慣れていらっしゃらないでしょう?」


女性は薄く笑い、言葉を続ける。


「ええと……どこから説明いたしましょうかしら。

まず私の名前は、カチュア・リリアノールと申します。

ここリリアノール女学園の校長を勤めさせていただいております」


カチュアと名乗った女性は恭しく一礼する。

女学園?校長?名前からして明らかに日本ではない。

様々な疑問が頭を駆け巡るが、上手く言葉にできない。


「そして今の貴方は――この私が『召喚』させていただいた、という形になります。

異世界にて死に瀕していた貴方の魂を呼び寄せ、この世界に『定着』させていただきました」


『召喚』?『定着』?

ま、待て。考えがまとまらない。


「さらに、少し言いにくいのですが――

『定着』する際に、貴方のあちら側での未練のせいか……

貴方の魂とこの学園が、融合してしまったという状態になります。」


本格的に意味がわからなくなってきたぞ。


「ええと、つまり……これから貴方の魂を分離する方法が見つかるまで――

『リリアノール魔法女学院』として、一緒に頑張っていきましょうね!」


カチュアは精一杯の苦笑いで俺(の意識体とでも言おうか)に笑いかける。



女子高生に囲まれた生活って、そういうことじゃねえよ!



俺は力の限り叫ぼうとしたが、

その声は学園管理室のモニターに文章となって表示されただけであった。

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