第2話

「ってことがあったのよ、入学早々。」


入学式を終え、私は駅前のファストフード店で友人…平田茜に愚痴をこぼしていた。


「もったいない。仲良くなってラブコメでもしたら良かったのに。」

「ばっかじゃないの。あんなのとお近づきになったら今後の学生生活が危うくなるわ。」

「…本音は?」

「……私は一途なので他の人にうつつを抜かしている場合ではないのです。」

「よろしい。」


茜は満足そうに笑う。その姿を見て、内心謎の悔しさに襲われながらも、ホットコーヒーに1口口をつけた。


「それにしてもまぁ、まさか高校まで一緒に行くなんて思っても見なかったわ。」

「残念なことにクラスは違うけどね。」

一緒が良かったなぁ、なんてわざとらしくぼやきながら茜がストローを回す。


「ところで、紫苑は部活何入るの?」

「お約束の文芸部。」

「よく飽きないね。ずっとパソコンで文字打ってるのって疲れない?」

「茜こそ、また陸上部でしょ。ずっと外走ってて疲れないの?」

「…お互い様かぁ」


くすくすと2人で笑う。案外、こんな時間が私は大好きだ。


「さて、そろそろ帰りますか。」

「そうだね。」


耳をすますと、遠くから愛の鐘のメロディが聞こえてきた。そろそろ5時半だ。


「それじゃ、また明日。」

「紫苑、」


茜が、まっすぐに私を見る。綺麗で、吸い込まれそうなくらい澄んだ目で。


「今年こそ、頑張ってね。」


ふわり、と微笑むと彼女は家に向かって走り出した。

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