店長!エルフちゃんがまたクレーム出してます!
@nana777
第1話 エルフと履歴書
ぼくは山崎トシオ。
都心から少し離れた地元のコンビニでバイトする普通の大学生だ。
あー、ひまだ。
そりゃ日曜日の午後三時。
なかなか盛況とは言えない時間帯である。
思わず大きな欠伸が出てしまった。
あー、商品の補充しなきゃ。
でもお客さんいないんだし、減りようがないんだけど。
「あの」
か細い声に振り返った。
するとそこにはいつの間にか、小柄で可愛らしいお嬢さんが立っていた。
肌が真っ白で、金細工のようにキラキラ輝く長い髪。
テレビでしか見られないような美少女である。
そんな彼女の、最も気になる部分。
ぴょこぴょこ。
耳がピンととんがっている。
……エルフだ。
初めて見た。
「は、はあ。どうかいたしましたか」
エルフの少女はじっとぼくを睨みつけている。
どうしたんだろう。
しまった。耳をじろじろ見ていたのがバレただろうか。
エルフは非常に気難しいことで有名なのだ。
下手にクレームにでもなったら大変だ。
すると彼女は一通の封筒を差し出してきた。
どうやらクレームではないらしい。
「あ、郵便ですか。それでしたら、こちらで切手を買っていただいて外のポストに……」
ふるふる。
エルフのお嬢さんは首を振った。
どうやら違うらしい。
確かに見れば、その封筒、あて名もなにも書いていなかった。
「え、じゃあ、どうしたんですか?」
ずいっ。
そのお嬢さん、封筒をぼくに押しつけてきた。
なんだろうか。
まさか強盗?
この封筒の中にエルフの秘薬が詰まっていて、開けたら一瞬で眠らされるとか……。
ぼくは恐る恐る、その中身を見た。
……なにこれ。履歴書?
写真欄には口をへの字に結んだ彼女の写真が貼ってある。
そしてお嬢さんは、店内に貼ってあるポスターを指さした。
『スタッフ急募。日程応相談。土日でられるひと歓迎』
目が合うと、彼女はがばっと頭を下げた。
「よ、よろしくお願いひましゅ!」
噛んだ。
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