リークとパーシー物語
小林悠区
プロローグ クゥの手記
僕は、貧しい人々の暮らす村に生まれた。
きっとこの世界のどこも、同じなのだろうと、思っていた。
資本家という立場にいる人間に、奴隷として買われた。
資本家は帝国に貢献するから、保護される。
無学だった僕は、ただ、鞭におびえて、雑用をした。
病気になっても僕らは、働かされた。
横になったら、飯を抜かれた。
他の奴隷仲間も、次々と死に、新しい奴隷が買われてきた。
当時僕はまだ少年だった。
奴隷になって以来、ほめられたことはない。
たくさんひどい言葉を浴びせられ、仕打ちを受けた。
資本家の息子に、しょっちゅう悪戯をされる。
パチンコでたまを当てられたり、金属バットで殴られたり。
それだけならまだいい。
息子は、わざと落書きをしたり花びんを割ったりするのだ。
そしてそれを僕がやったと親にいいつける。
弁解もむなしく、僕はお仕置きを受ける。
飯を二日抜かれたり、吹雪の外に締め出されたり。
風呂で氷水を浴びせられたり、根性焼きをされたり。
いちばんは、主人に笑いながら首を絞められたとき。
――お前の代わりはいくらでもいるんだぞ。
――苦しいか、なら死ぬ気で働け。
もう僕は、命というものが分からなくなった。
思い返せば、このころからかもしれない。
あの恐ろしい計画を立てようと考えたのは。
僕にはカイという同い年の友がいた。
あの家には、カイと僕の二人だけがしばらくつとめていた。
カイは気丈で、どんな仕打ちにも耐えた。
僕はカイを尊敬し、今も変わらぬ友達でいるのが幸せだ。
それからリークという、美しい少年がやってきた。
そう。あの伝説のリークだ。
そうして僕らの冒険は始まった。
字の読み書きができない僕を救ってくれたのも、かれだ。
今こうして文章がつづれるのも、かれのおかげ。
だけど命とは何だろうということまでは、分からない。
かれは教えてくれなかった。
リークと僕たちは始めた。
陰謀と混沌を倒す、勇気と愛の冒険を。
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