貝がら

ひらゆき

第1話


目を閉じる。

私は美しい海辺の砂浜にいるのだと想像する。


夏の終わり、ひと夏の思い出に貝殻をひろう。

それは、きれいな巻貝だ。


私は目をあける。

なんてことない、いつもの自分の部屋。

膝にのせた雑誌には心理テストが特集されていた。

私は、結果を見て小さくため息をついた。


海の近くのおみやげ屋さんで売っているような、突起がたくさんついたきれいな貝を想像した人は、激しい恋をしたことがあるのだという。

確かに、私は激しい恋なんて知らない。



初恋は、隣の家の3つ年上のシンさんだった。

ものすごく格好よかった。


本人も自覚があったのか、シンさんは高校を卒業すると、芸能界を目指して家を出て行った。

きっとすぐにアイドルになると思っていたけれど、あれから2年。

テレビでシンさんを見たことはない。

毎年バレンタインデーには、大きな紙袋いっぱいにチョコレートを持って帰ってくるくらいの人気のある人だったのに。


私は上京したシンさんと入れ違いで、同じ高校に入学した。

私を「好きだ」と言ってくれる男の子と春から付き合い始めて、今年の夏、彼の部屋で初めてえっちをした。


初めてのえっちは、マンガで見るととても気持ちよさそうだけど、思ったほど気持ちよくはなかった。

でも、次から少し気持ちいいような気がした。

ただ、あっというまにその時が終わってしまうので、少し物足りないような気がする。


彼に、もっとして欲しいことがあっても言えなかった。

皆どうしているんだろう。それとも、私が欲張りすぎなのだろうか。

できれば、もっと気持ちいいほうがいい。


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