掌編小説「夢」
ナガス
掌編小説「夢」
夢の中で、俺は荒くれ者だった。
恐らく年の頃は十代。喧嘩っぱやく、多少のイチャモンにも腹を立て、難癖を付けに行き、相手が自分に屈しなければ暴力により気分を晴らすような、言ってみれば社会に全く必要のない人間である。
夢の中での出来事なので、とにかく場面飛びが激しい。気がつくと俺はいつでも喧嘩をしていた。喧嘩の腕は相当なもののようで、俺は連戦連勝。誰に負ける事も無く、地面を舐めた事は一度も無い。
気に食わない男の体を持ち上げ、地面に叩きつける。そして追い打ちとばかりに相手の首元につま先をねじ込み、強さに緩急をつけて痛めつけた。相手の苦しんでいる顔を見て性的に興奮するような癖はどうやら持っていないようで、俺はただただ、気分を晴らすためだけに足を動かす。
そんな中、喧嘩相手の友人が俺のほうへと近づいてきて、とても冷静な口調で話し始めた。
「コイツの父親、殺人犯なんだ」
その言葉を聞いて、俺は寒気を伴った震えを感じた。咄嗟に倒れている男からつま先を外し、数歩下がる。
殺人犯……ただそれだけの単語を聞いただけで、俺の思考は死を免れようと、勝手に動き出す。どう言い繕い、この場をおさめるか。それを瞬時に考え、答えを探す。
しかし思考がまとまるよりも先に、俺の手によって投げられ、地面に倒れていた男が立ち上がり、ニヤリと微笑みを浮かべた。対峙していた時には気が付かなかったが、この男は相当な男前であり、浮かべた微笑みはまるで映画やドラマのワンシーンのように俺の目には映る。つまり相手は心持たぬ冷徹な主人公で、俺は脇役。殺される、脇役のように、感じた。
「……お前、中々根性あるじゃねぇか。ここまでされてナキ入れない奴は、滅多に居ないぞ」
俺は男前の肩を叩き、今の自身で作れる最大限の笑顔を男前へと向ける。
「それは言っちゃいけない事だ。俺はそんな言葉に懐柔されるほど、心が清涼ではない」
男前は俺の手を払い、俺の背中をポンと叩く。そして自身の顔を俺へと近づけ、嫌味ったらしく口角を上げて、ゆっくりと口を開いた。
「二十二億を、九年間のうちに払え。さもなければ、父親が黙っちゃいない」
その言葉の意味を理解できないほど、俺の頭は馬鹿では無かった。いや、何故その数字が出てきたのかは全く理解出来ていないが、九年間のうちに二十二億を払えなければ、俺の命はおろか、俺の家族すらも危ういという事は、よく分かる。
恐怖という色で染まってしまっている心とは裏腹に、俺の頭は九年間の間に一体何が出来るだろうか……という事を考えてしまい、俺はただただその思いに思考を巡らせる。
そこで思いついたのが、ウサギの馬車に乗り、月まで逃避するというもの。
俺は早速ウサギを大量に買い漁り、育て、ウサギ達が最も体力的に充実しているであろう二年目の秋に、馬車を作った。
ウサギ達は重たいであろう俺の体と馬車を引っ張り、月へと向かい、走り出した。
ルララ。ルララ。何かの歌が聞こえてくる。
目を覚ました俺は、全身にビッショリと汗をかいている事がわかった。
そして夢であった事を心から。それはもう、心から。感謝した。
やはり荒くれてはいけない。人間、心に余裕を持って生きなければならない。そう思った休日の朝だった。
編集者(ナガス)よりコメント
パターンが以前のコメディと全く一緒です。貴方の創作能力とボキャブラリーはその程度なのですか?
掌編小説「夢」 ナガス @nagasu18
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