ドラフト
11月。
初冬と呼ばれる時期、陰暦では霜月。冬も近くなった最近だが、この日は何故だか暖かかった。
全日本大学野球選手権で日本一に輝いた駒澤大学。もう四年生は引退の時期だが、この日はグラウンドに3人、四年生がいた。
パワーヒッターの早野賢祐、俊足の好打者、若田部光、そして技巧派左腕の岡田勝。
プロ入団志願書を出している3人にとっても、この日は期待と緊張が混じったような表情で、軽いランニングをしていた。
若「多分巨人か楽天だろうなぁ、俺。」
岡「えっ?阪神のスカウトさんも来てなかったっけ?お前んとこ。」
若「多分ないね。阪神の狙いは中京の新垣くんだろうよ。」
岡「新垣…あ~、中京大のエースか。」
3人は、新垣修との対戦経験はない。新垣は、プロでも充分に通用するであろうコントロールの持ち主だ。この3人も新垣のことは知っているのだが、その実力がどのようなものなのかはよく分かっていない。
岡「俺は多分ホークスだな。一番見に来てくれてた。
若「ふーん。…賢祐はカープだろ?」
それまで黙々とランニングを続けていた早野が顔をあげた。
早「ああ、俺は絶対にカープに入るって決めている。ダメだったらプロ入り拒否って社会人野球に入るなりなんなりするよ。」
かなり無鉄砲な発言だった。最も、他球団で活躍してFAで広島に移籍する手もあるのだが、早野はそれが嫌だった。
若「ハハ…やっぱり新井さんか。」
Red Spirit ~赤い魂~ @kei-wakabayashi5273
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