勇敢なおわりと不純なはじまりと

@nonn

第1話 うしなう

ほんとうの、ほんとうのおわりがやってきて

わたしをすっぽり包んでしまう。



真っ暗ななかで、

たくさんたくさんの写真を1つづつ選択して

最後に消去のボタンを押して少し待つ。

そうやって、これはつまり何を消そうとしてるのだろう。


照れたみたいにわらった顔、

眩しそうに細めた目、

カメラを構えたそのひとに向けたぜんぶ。

たくさんのたくさんの写真をけしていると、

そのときの自分までが消えていくみたいな

そんな感覚がやってきて、

すべての根拠が、いまの私に繋がるすべてが

なくなってしまうような、

これは不安じゃない、こわくて、かなしい。


あのときどんな話をしたのだっけ、

どんな色が見えたのだっけ、

どの距離で、みえた横顔はどんなふうで。


かなしさの乗り越えかたをひっぱりだそうとしてみる。

わたしの経験という引き出しのどこかにしまっておいたはずのもの。

けれどもそれも、いつも頭をなでてくれた

手の感触に邪魔されて、

役に立ちそうなことは見当たらない。



こんなようになって、

せかいに突然投げ出されて、ひとりで。


くるしい、いま、たしかにかなしい。

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