戦闘屋と企業強盗と無線

 ヨロイたちの通信が途絶えた。電波が出ていない?

これじゃFCSのハックもできない。


 技術屋が天の眼を赤外線領域に切り替える。わずかに漏れ出した光を検出。


 連中、衛星光通信レーザーコムに切り替えたんだな。

 通信内容が拾えない。天の眼とは衛星が違う。今の時間、空にいる衛星はいくつある?

 天頂を中心としたマップに無数の衛星が表示される。

 特定に時間がかかりそうだ。


「FCSのハックに手間取ってる。レーザー通信に切り替えた模様。スモークを連中のど真ん中で炊いてやって!!」


 スモークグレネードを投げると白煙が吹き出す。レーザーの指向している方向を確認しようとするが不可視光のようだ。

 赤外視覚に切り替えると煙にまっすぐなラインが浮かび上がる。


「フレアで連中の通信を妨害して!!」


 車の陰からヨロイどもの真上にフレアを打ち上げる。

 救助要請用の信号弾が強く光り、赤外視覚を塗りつぶす。

ついでにチャフもいてやりたかったがそんな便利なものは持ち合わせがない。戦闘機じゃないんだ、仕方ない。

 代わりに改造したレッドレーザー墨出し器を積んだドローンを上空にホバリングさせて通信妨害。

幸い焼けるような画像素子や増幅装置アンプは使っていない。赤外視覚はしばらく使えないけれど。


 フレアのおかげか敵チームに混乱が広がり、射撃がやむ。このスキに場所を移動。こまめに移動しないと榴弾りゅうだんをぶちこまれて死ぬ。


 こちらの通信は通常では使わないマイナーな帯域を使う短距離無線だ。敵の用意している汎用ジャマーの効果は薄い。なにせ企業国家と企業国家のあいだを抜けて張り巡らされた自領土を走り戦闘を行う鉄道持ち通販企業国家。そこでジャマーを使うとなると周波数帯や出力の影響が大きすぎると他の企業国家から訴えられることになりかねない。

 いちおう他の企業国家相手の商売だからな。そういった配慮と利点のバランスを取って装備が決められている。ここでだけ使うのであれば自国家内だから強力なジャマーでもいいのだろうが、装備を複数用意するのはコスト比が悪かったようだ。


 アルファチームといえど採算や予算に縛られた企業の犬か。


「なんだって?」


 用心棒がその短距離無線越しに聞き返す。


「いやなに。相手のジャマーの性能が割れてて良かったな、って話だよ。中華のアフリカ輸出向け無線ならニホン自治政府じゃ非合法・・・ってことになってるからな。普通にグレー通販ディープマーケットで買えるけどさ」


「ふだんからそこしか使ってねえよ」


 合法ってなんなんだろうな。

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