銃工ふたり
町内会の寄り合いに出てみたら、いきなり
何度か見かけた連中だ。こいつらはまともに銃を使ったことがあるのか?
どうみてもチンピラとどっこい。もしくは少しマシかも、なレベルだ。チンピラよりは銃に慣れているようではあるが、動きは素人っぽかった。
「なんで俺なんです?」
一応は同じ住民同士。下手に出ておく。
「あんた、密造銃を作って売ってるだろ。でもチンピラには卸してない。多少はましな感覚の持ち主だと思ったんだ。見立て違いか?」
裏稼業でも取り込んでおけば敵には回らないって了見か。間違ってはいない。
「こっちは趣味で作ってるだけですよ。それに路上強盗なんかも出るから最低限の代物は持っておきたいって
「それで使い捨て銃か」
「
「バラしてみたけど、よくもまああんなもんで撃てるようにできるもんだ。丁度いい。
似たようなことをしてた
おーい、
奥から
ミリタリーコートをスーツの上に羽織った彼はこちらを値踏みするような視線を遠慮なく投げかける。
「どうも、三丁目のビルに住んでるジェームズです。これでもニホン人だし、八分の一は……、祖母がハワイ出身の日系でね」
そういって目と髪の毛を指差す。老眼鏡の向こうに見える青い瞳が鋭い。
「マツモトです。
握手をしようと手を伸ばしたらお辞儀で返された。
宙をつかみかけた手を戻して会釈。
「え~と、あなたも銃を?」
「一応は。80パーセントフレームを買ってきて最終工程を加工してるだけだけど。
マツモトさんはゼロから作ってるそうで。なかなかいないよ、そういう気合いが入った人」
こちらを見て軽く微笑む。
「最初は本格的なのを、それこそジェームズさんみたいに作ってたんですけどね。チンピラが売れって言ってきてから状況が変わりまして。護身用に安くて使い捨てのショットデリンジャーを作ってます」
「アパートのオーナーが嘆いてましたね。チンピラがミンチに変わる、開けちゃいけないドアがあるって」
そういって笑う。
「まともに使わないヤツに売るつもりはありませんから」
こっちは笑い事ではない。
「なんだったらうちのビルに引っ越すかい? チンピラは近寄らないよ」
「なんでまた」
勧めてくれた理由を聞いたつもりだったが。
「自警団のきっかけがボクでね。若いのが時々遊びにくるからあいてた一部屋を融通したら自警団のたまり場になっちゃって。チンピラは近寄らないのさ」
「……はあ」
「近くにうまい焼き肉屋もあるし、今度遊びに来たらいい。
「遊びに伺うのは願ったり
「焼き肉屋の主人が初代の自警団団長で、年二回は食べ放題のチケットをくれるんだ。期限が近いからどうしたものかと思ってたんだ。本人とその連れだけ有効なんで人に譲るわけにもいかないからさ」
回答に困る。奢ってもらう
それが顔に出てしまったのだろう。
「かわりに自警団への参加、考えてみてよ。若い人は少なくてね」
「そういうことでしたら」
肉を食わせてもらって顔なじみを増やせるなら一石二鳥だ。
願わくば、ジェームズさんが説教くさいおっさんではありませんように。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます