弱小弾薬メーカー(ディスポーサブルボディ付き)


 くそったれ


 最初は趣味で銃を作り始めたんだ。

 だが、大量購入したいってやつが来てから話は変わった。


 どこで聞きつけたのか、無登録合法銃ゴーストガンを知り合いに売ってることがバレた。

 手元にある分しか売れないと突っぱねたら脅された。その場で殺して威力の確認ができた、と喜んでるのもつかの間。チンピラが毎日のように押し寄せるようになった。


 同じアパートの空き部屋から出入りするようになったのは一週間後。わざわざ壁に穴を開けて通れるようにしたんだぜ?

 あいつらゴキブリみたいにどんどん増えやがる。


 ドアを薄いベニアにして、内側に四角い密造銃を並べた。おかげで安く量産する技術も確立できてしまった。

 いちいちスイッチで発砲する銃を切り替えるのも面倒だし、木の板にくぎを打ってケーブルを当てていくスイッチにすれば、単射も連射も簡単にできると気づいた。それからはさらに簡単なハンドキャノンも量産するようになった。


 クソ共が。


 あいつらのいいように扱われるのはごめんだ。俺は俺で欲しいものを自分で作りたいからやってるだけだったんだ。なのに必要に迫られて作るのはドアに仕込んだデリンジャーだ。


 ドアも窓も銃を好きに撃てるように改造した。ベニア板を張り替え、撃った銃だけ交換すれば、また防衛できる。銃眼になる部分だけ先に撃ってしまえば、そこを外して応戦もできる。


 問題は、いつあいつらが銃を持ち出してくるかだ。

 今は合法なIDを持ってないと銃は合法には買えない。

 俺は点火装置ディスポーサブルボディ付き弾丸アモを作ってるだけ、を言い訳に自作品を友人たちに譲った。弾薬の売り買いは自由だし、そもそも一定以下の威力の銃は法的には銃ではなく護身武装具レスリーサルウェポンだ。銃メーカーとしての免許も登録も必要ない。


 俺はもっと本格的な銃を作りたいんだ。

 なんで使い捨てのポケットデリンジャーばっかり量産してるんだ。


 ほとんど長さのない銃身バレル薬室チャンバー、薬莢兼用の金属パイプ。点火装置プライマーとしての電気着火装置。引金トリガー代わりの電気スイッチ。そして一気に使い切ってしまう電池。

 最近はめったに起きなくなったが、念のため不発をリカバーするために二発同時発射の散弾式。それに詰めるための鉄球や鉛粒。組み立てるための瞬間接着剤や硬化剤代わりの重曹、パテ、配線類。


 これらを通販で買って、届くダンボール箱が外装に化ける。

 無駄を極端に減らした使い捨て銃だ。こればっかり作っているうちに、時間を取られて趣味の銃を作れなくなってしまった。


 ドアの向こうで誰かがえている。またあいつらか。

 ドアカメラで相手がチンピラであることを確認したらスイッチを押す。


 発砲音。


 そして静かになる廊下。ビルのオーナーが清掃業者に連絡をしてくれていることだろう。


 どうしてこうなっちまったんだ。

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