第279話 俺のモブ厳感覚がそうささやいている





※話が行ったり来たりして申し訳ありません。

 ひと段落ついたら並び替えます。







食人鬼は静かにリムガントの街を歩く。







『食人鬼グリム』は有名だ。


毎回、人にそっくりに擬態して顔を変え

人知れず、静かにそして堂々と街を歩き、獲物を見つける。



知能を持つ魔獣は珍しいが、グリムには生まれつき知能があり

人語を操る事も容易かった。


そして、それは同時に、人を食す事も容易くさせた。




今日はリムガントの下町の歓楽街で獲物を探す。




リムガント、クラスティア王国の首都にして、あの憎い魔法協会のお膝元


戦闘力に自信があった、昔、魔法協会員に挑んだこともあるが

それは失態と言う他ない苦い経験だった。


奴らは強い、堂々と戦うのは危険




だが、不意打ちならばどうだ?




きっとそれならば容易く倒せる。

そもそも魔法さえ使わせなければただのか弱い人間なのだから



料理屋に入る。



人間の肉以外は受け付けないが一応料理を注文する。

人間のフリはしなくてはならない。





「モーブ、お前、今日は一段と青い顔してるけど、大丈夫かよ?」





「ああ、問題ない」


「とてもそうは見えんが」



となりの席に若い男二人が腰かけていた。

あの紺色のローブ、魔法協会員・・・




「今日、夜勤だし、もう宿舎帰って寝ようぜ、なぁ」




「先に帰って構わない、俺はここに残る」




「なんで?」





「今日、ここで、何か『よくない事』が起こる気がする」




グリムはびくっと体を震わせる。

まさか・・・

この男、私の存在に気づいたというのか・・・


焦りを必死で隠す。

知らぬ間に心拍数が上がっている。





「なんでそんな事がわかるんだ?」





顔に手を当てて、

苦しそうに男は呟く。





「俺の『モブ厳感覚』が、そう ささやいて いる」




・・・



も・・・ん?・・・なんだって?





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