第233話 たとえ、そっぽを向かれても
魔法は人の優位に立てる技術だ。
まして、魔法を目の当たりにしたことがない辺境の農民からすれば
それは、圧倒的な力であった。
例えばそれは、その夜のノミンにも当てはまる。
魔法斬撃を使う3人の盗賊に木の棒で挑んだノミンは、
木の棒を大根のように真っ二つにされ、肩口に斬撃を受けて倒れこんでいた。
「がはははは!!」
シスターを縛り上げて担ぐ。
盗賊たちは笑いが止まらない。
「魔法が使える俺たちは、すべて奪っていい権利があるんだよ」
「農民ごとき脇役が出しゃばっていい訳がないだろうが!」
無様に足を踏みつけられるノミン
流れる血が止まらない。
無力
知っている。
・・・
霞む意識の中
5年前に死んだ祖母の姿が見える。
一宿一飯の恩義を忘れずに返す事をノミンに諭す。
優しい大きなしわくちゃの手
「この村に住む誰もが守ってきたキョウサク村の『誇り』じゃよ」
そこに村があった、その誇りを胸に刻んで歴史を刻んだ人々がいた、そこは暖かい場所だった。
涙をぬぐう。
ああ、そうだ
たとえ世界中からそっぽを向かれようと構うものか
「俺は『誇り』を持って生きる」
ノミンは立ち上がった。
傷口から溢れる血液・・・ズキズキと傷の痛みが響く・・・
大きく深呼吸をする。
カボチャを手に持ち、それを盾に突進する。
うらぁあああ!
「あん?」
「馬鹿が、野菜ごときで、この魔法斬撃が防げるわけがないだろうが!」
ポキン
「は?」
折れた剣の切っ先が宙を舞う。
あれ、剣の切っ先・・・ドコ行った?
「知ってるか?・・・キョウサク村のカボチャは、刃を通さない」
カボチャを持ったノミンの手の渾身の右ストレートが、
盗賊のあごに直撃する。
吹っ飛んだ盗賊の崩れ落ちる音が周囲に響いた。
$$$
魔法協会二つ名「カボチャ鈍器のノミン」は有名人だ。
カボチャの兜に身を包んだ彼の絶対防御を崩せる盗賊や魔獣がいるものか
今では
盗賊避けの象徴になり辺境の村ではカボチャ頭のカカシが立てられている事が多い。
彼の創る防具は高値で取引され、村の財政も大きく潤ったという
「あ、またノミンさんだ」
「しすたーさんにけっこんをもうしこみにきたんだよね」
教会の子供たちは笑う。
ノミンの熱烈なプロポーズに、
シスターは頬を赤く染め下を向いてはぐらかす。
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